あなたはどのタイプ?「働く人としての価値」4種 キャリア構築に役立つ「マーケティングの英知」
情緒的な価値が潜在的であるというとき、その価値、つまりその人にとっての意味が、純粋に自分自身の中に発生すると考えてください。これを「共感価値」と呼んでいます。モンスターエナジーとライバルのレッドブルは、この「評判価値」「共感価値」いずれにおいても優れています。ここでは、レッドブルを例にとって後者を説明します。
レッドブルは、少し前はエアレースや、今ではeスポーツの大会を主催するなど、チャレンジする人を応援するという企業姿勢を貫いています。ですので、例えばeスポーツが好きな、新しい価値観を信奉する人であれば、このレッドブルの姿勢に共感し、飲むことで心理的な満足感が得られます。このような価値を「共感価値」と呼んでいます。意味は意味でも、アクセサリーではなく「お守り」的な意味です。
この4つの価値ですが、どれがよくてどれが悪い、というものではありません。商材や相手によって、必要とされる価値は違うからです。また、どれか1つを選ぶ、というものでもなく、必要に応じて組み合わせるべきものです。例えば、iPhoneはすべての価値を高いレベルで提供しています。重要なのは、価値にはいろいろな種類がある、と理解することです。
ここでいう共感価値というのは、お客様自身、そういった価値を求めていることに気づいていないこともあります。また、評判価値は気がついていても公言しないことが多い。ですから、相手のなかにある情緒的価値は見つけるのが難しいものです。そこをうまくすくい取るところが、マーケティングの難しいところであり、面白いところでもあります。
ここでは実際の商品で「価値の4象限」を説明してきましたが、これはYouTubeやSNSなどで情報発信していくときの、自分の「ウリ」を整理するのにも役立ちます。
また、これは労働市場に「自分という商品」を売り出していくときにも、役立つ考え方です。「ガンガン攻めて数字が稼げる」という実利価値のみならず、「安心してチームを任せられる」という保証価値を求める会社も多いでしょう。理念を体現したり、社外でも尊敬されて「会社の顔になる」ことで価値を発揮する人もいます。最近導入する企業が多い「バリュー(価値)評価」というのは、まさにそうした、実利価値以外の価値もしっかりと評価しよう、という動きです。
「ガンガン攻めて数字が稼げない」自分にコンプレックスを感じていても、もしかしたら会社のほうが、より広い視点で自分の価値を評価してくれているかもしれないのです。特定の業界や組織でどのような価値が求められており、自分がいまどんな価値を提供しているのか。それを常に考えておくことは、キャリアを構築するうえでとても大切だと考えます。
提供する価値は、商品開発の段階で決めておく
田中:なるほど、ご説明ありがとうございます。質問なのですが、どの象限にある価値を持った商品にするというのは、いつの段階で決めるものなのでしょうか?
知名度が上がるなどブランドが立ってきてから、4象限が見えてくるのか? それともローンチの段階では実利価値で攻め、その後、CMなどのコミュニケーションによって共感価値を訴えるなど、ブランドの成長段階で戦略的に変えるのか? どちらが正しいのか、もしくは一般的なのか訊きたかったので、教えていただけますか?
井上:商品をつくる前に決め切るのが本来のやり方ではないでしょうか。なぜかと言うと、最初に価値の定義を間違えてしまうと、その後で挽回するのは非常に困難だからです。
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