有料会員限定

アース製薬社長が赤裸々に告白「もはや『体力勝負』は避けられない」、ドラッグストア巨大化を受けM&A積極化、バスクリンと統合した背景

✎ 1〜 ✎ 403 ✎ 404 ✎ 405 ✎ 406
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
川端克宜/かわばた・かつのり 1971年生まれ。近畿大学商経学部卒業、94年3月アース製薬入社。役員待遇営業本部大阪支店支店長、取締役ガーデニング戦略本部本部長などを経て、2014年3月代表取締役社長に就任。19年よりバスクリン取締役会長などを兼務し、21年3月より代表取締役社長CEO(最高経営責任者)(写真:今井康一)
殺虫剤で圧倒的シェアを誇り、かつ「モンダミン」や「バスクリン」など日用品で数々のロングセラーブランドを擁するアース製薬。地球温暖化による「殺虫剤の通年商品化」という追い風が吹く一方、足元ではドラッグストア業界の巨大再編や原材料の高騰といった荒波に直面している。この状況下、2026年1月に長年子会社だったバスクリンを吸収合併した。この統合の真意と中期経営計画で掲げるM&A戦略の行方を、川端克宜社長に聞いた。

 

――12年にグループ入りしたバスクリンを、このタイミングで統合した理由は?

背景としては、外部環境の変化が大きい。まず、コロナ禍以降の環境変化、特に原材料費の高騰や円安といったコスト面の影響があった。バスクリンを統合し、機能が重複する商品のSKU(受発注・在庫管理の最小単位)を削減するなど効率化を進められれば、収益面でのシナジーが期待できる。

また、主な販売チャネルであるドラッグストア業界の再編が進み、購買力が強まっていることも挙げられる。同じグループなのにバスクリンとアース製薬の営業担当者が別々に商談に行くのは非効率的であると前からわかっていたが、両社の切磋琢磨を促すための「必要悪」としてあえて残していた。

しかし、今の環境下では、グループ内で棚を取り合ったり、牽制し合うための販促費を使うよりも、窓口を一本化して一緒に営業したほうが合理的だという判断になった。

小売りの巨大化が招く「メーカー淘汰」の現実

――ドラッグストア業界の再編がメーカー側に与える影響をどのようにみていますか。

メーカーにとって、もはや「体力勝負」は避けられない。かつて販売先が10社あれば、1社に断られてもほかでカバーできた。しかし、販売先が3社、5社に集約されると、1社から棚を外されるだけで売り上げの3分の1、5分の1を失う「致命傷」になりかねない。メーカーは自分でお店を持っていないため、販売店に断られることは「売り先がなくなる」ことを意味し、経営危機に直結するリスクになる。

小売り側も生き残りを懸け、スケールメリットを生かした厳しい条件交渉やプライベートブランド(PB)の強化を進めている。これに対抗できるのは、圧倒的なブランド力か、独自の特許を持つ企業だけ。中小メーカーが単独で生き残るのは、非常に厳しい時代だ。

だからこそ、アース製薬はM&Aの加速やブランド力のいっそうの強化に力を注ぐ。アース製薬には経営統括本部という組織の中に、社長直下でM&Aを担当する機能がある。自分たちから積極的に案件を探し回るというよりは、日々持ち込まれる多くの案件を多角的に検証している。

――多くの相談があっても、実際にM&Aに至るケースは限られます。どのような背景があるのでしょうか。

壁になるのが経営者の決断。日用品業界はオーナー企業が多く、経営者の感情的な葛藤が最大の壁になる。頭では「統合の必要性」を理解していても、先代から受け継いだ「家」の看板を降ろすことに強い抵抗感を示し、決断が遅れてしまうケースが少なくない。

しかし、社長の本分は「家業を守る」こと以上に「社員の生活と未来を守る」ことだ。保身や情緒的な理由で決断が遅れれば、企業価値は目減りし、救済すら不可能になることもある。会社が健常なうちに、将来を見据えて「腹をくくれるか」が、社員を幸せにできるかどうかの分かれ道だ。

次ページ海外の「虫ケア」市場はまだまだ伸びる
関連記事
トピックボードAD