アクセンチュアvs電通、異業種バトルが白熱の訳 薄れる広告とコンサルの境界線、勝負の行方は
両社の事業領域が入り乱れる中、アクセンチュアと電通に求められているものが近いことを示す現象がほかにも起きている。この数年で相次いで合弁会社を設立していることだ。「目的は全社的なデジタル改革。通常のコンサル契約でもできるが、合弁会社で互いの社員を一緒に働かせることでデジタル人材を育ててほしいという要望が強い」(アクセンチュアの江川社長)。
アクセンチュアはいち早く、2015年にファーストリテイリングと事業のデジタル化を進める合弁会社を設立。直近では今年7月に資生堂と、デジタルマーケティングを軸にした合弁会社を立ち上げる。
一方電通グループも今年1月、トヨタ自動車と、コミュニケーションの強化とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を中核とする合弁持株会社を発足。さらに三井住友フィナンシャルグループと合弁事業を検討中との報道も出ている。
電通グループの山本敏博社長は5月の決算説明会の場で、「合弁会社の設立や重要ポジションへの社員の出向・転籍など、顧客企業との関係が深まっている。まだ社名は明かせないが、金融や食品、モビリティ、都市開発などの業界と新たな形の連携が進んでいる」と話した。
アクセンチュアに問われることは?
では、広告とコンサルティングの境界線が薄れた結果、アクセンチュアと電通のどちらに分があるのか。
前出の電通グループ関係者は当然アクセンチュアがドロガファイブを日本で展開することは意識しているとしつつも、「コンサルの左脳の発想とクリエイティブの右脳の発想は本来対を成すもので、真ん中でつなげる人がいないと提案内容が決まらないことも多い。電通ではそれを営業部隊が担ってきた。アクセンチュアにそうした機能があるのかは疑問」と指摘する。
クリエイティブを強化する流れに対しては、アクセンチュア社内からも冷ややかな声が上がる。「クライアントとつながる入り口は増えたかもしれない。ただアクセンチュアはもともとシステム屋で、IT開発の案件のほうが人も張り付けやすく儲かる。短期的な売り上げを稼げる人のほうが社内で評価されやすいので、箱を作ったところでクリエイティブ人材が活躍できるかは微妙だ」(関係者)。
データやテクノロジーによってマーケティングの形は大きく変わっている。時代の流れを如実に反映した“異種格闘技戦”の勝敗は、アクセンチュアがクリエイティブ人材を生かす環境を作れるか否かで分かれそうだ。
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