電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか

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東京・汐留の本社ビル売却を進めるなど、資産の整理を加速する(編集部撮影)

巨額減損に人員削減。デジタル転換で出遅れたツケは大きかった。

国内広告最大手の電通グループが2月15日に発表した2020年12月期の最終損益は1595億円という過去最大、そして2期連続の赤字(前期は808億円の赤字)に沈んだ。

売上高に当たる収益は9392億円(前期比10%減)、営業損益は1406億円の赤字(前期は33億円の赤字)で、すべての段階利益で2期連続の赤字となった。「再び赤字となったことは経営者として重く受け止めている」。山本敏博社長は投資家向け決算説明会でそう口にした。

赤字の最大の要因は、コロナ禍で世界の広告市況が悪化したことを受け、過去の海外買収で膨らんだのれんの減損で1400億円超の損失を計上したことだ。さらに783億円の事業構造改革費用も打撃となった。内訳は、海外での事業統合や人員削減で500億円超、国内での早期退職で200億円超。2021年12月期にも引き続き、残りの構造改革費用として国内外で500億円超を計上する見込みだ。

旧来型の代理店ビジネスは限界

電通グループは2013年に英広告大手イージスを約4000億円で買収した後、海外で毎年10社以上を矢継ぎ早に取り込み、国内事業を超える規模となった。売上総利益ベースの海外比率は直近で約58%だ。世界シェアでは今や英WPPグループ、米オムニコムグループ、仏ピュブリシスグループという世界3大広告会社に次ぐレベルになっている。

だが結果的にM&Aが足を引っ張った。電通グループの曽我有信CFO(最高財務責任者)は、「事業環境の変化が激しい」としたうえで、「今回減損の対象になったのは、イージスと一緒になった直後の2010年代前半に買収した広告領域の事業会社だ」と話す。

ここでいう広告領域とは、日本のマス広告のように広告会社がメディアの枠を買って広告主に売るという旧来型の“代理店”ビジネスを指す。2019年に海外のうちアジア太平洋(APAC)地域で700億円強の減損損失を計上した際も、同じ領域が中心だった。

ここ数年、電通グループは消費者に関するさまざまなデータを活用したデジタルマーケティングを中心とする業態への転換を急ぐ。

2020年の海外業績を見ると、旧来型の代理店ビジネスである「メディア」「クリエイティブ」の両部門の売上総利益が前期比15%以上減少した。一方、デジタルマーケティングを中心とした「カスタマーエクスペリエンスマネジメント」部門は同3.2%減にとどまった。国内でも売上高の3分の1を占めるテレビ広告が前期比12%減だったが、ネット広告は同1.4%減だった。

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