電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか
国内でもデジタル転換を進める。システム開発子会社の電通国際情報サービス(ISID)やデジタルマーケティング専業の電通デジタルの成長ぶりを強調。山本社長は決算説明会で、「マークル、ISID、電通デジタルの3社は過去3年で(売上総利益が)年平均で20%超伸びた」と話した。
中核子会社である電通の五十嵐博社長は「電通本体とISID、電通デジタルの3社の協業でデジタルのソリューション力を上げていく」と意気込む。「国内の大手企業にもマークルのサービスを提供するなど、海外との連携強化も進めている」(五十嵐氏)。
国内の営業利益率は大きく低下
その国内も今回、先述の通り構造改革を断行する。最大の課題は「高コスト体質」だった。2015年末に社員が過労などを原因として自殺したことを受け、国内では働き方改革を急速に進めてきた。その過程で人事システムへの投資や業務の外注などでコストが増加。一方で海外のように容易に人員削減ができない。国内事業の営業利益率は2016年12月期の23.1%から、直近は14.8%まで低下した。
構造改革の中身は大きく分けて2つだ。1つは国内事業を従来型の広告やデジタルマーケティング、顧客のビジネス変革支援などの4分野に分け、組織を再構成するものになる。その過程で人員規模の適正化を図るため、希望退職を募る計画だ。もう1つはコロナ禍で出社率が大きく減った東京・汐留の本社ビルを国内グループ会社間で共有すること。これによりグループ各社の家賃を節減する。
一連の人員削減や構造改革で2022年以降、国内外で年間平均約760億円の費用削減が可能だという。さらに現在は汐留の本社ビル売却も進める。「金額など詳細についてはコメントできない」(曽我CFO)とするが、今後の施策の柱としてバランスシートの効率化も挙げており、本社ビルも含めた資産を整理し、M&Aなどの投資資金を捻出するとみられる。
デジタルへの業態転換は、これまでマスメディアで謳歌してきた既得権益に頼らないことを意味する。デジタルマーケティングは広告会社だけでなく、米アクセンチュアをはじめとしたコンサルティング会社なども注力し、競争は苛烈だ。稼ぎどころである東京五輪の開催も危ぶまれる中、電通グループの底力が試されている。
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