グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋 ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に
ネット広告業界に大きな衝撃が広がった。
グーグルは1月14日、世界シェア約6割を占める同社のウェブブラウザ「Chrome(クローム)」で、「クッキー」と呼ばれるユーザーのネット閲覧履歴のデータが第三者のネット広告企業などに提供される仕組みを停止すると発表した。2022年までに段階的に実施する方針だ。
クッキーを制限する動きはアップルが先んじていた。アップルのブラウザー「Safari(サファリ)」では2017年以降、段階的に制限の度合いを拡大。現在は実質的に、広告用にクッキーが使えない。
端末メーカーとしてユーザーのプライバシー保護の姿勢を強調していたアップルに、グーグルが追随した格好だ。「アップル対グーグルという、ネット上のエコシステムの争いが激しくなっている」(広告や検索のコンサルティングを手がけるプリンシプルの中村研太常務)。
クッキーは何に使われているのか
クッキーは1994年に考案された仕組みで、ウェブサイトが発行し、ブラウザ側に保存されるユーザーの閲覧履歴データだ。ネット通販サイトやSNSなどで、ほかのサイトに移動したり、ブラウザを閉じたりしても、ログイン状態や買い物途中のカートの中身を維持するといった目的で使われてきた。
その後、ユーザーの興味や関心、属性を分析するためにクッキーが活用され、いわゆる「ターゲティング広告」の配信が盛んになった。1人ひとりの閲覧履歴がわかるため、ある企業のウェブサイトに一度訪問したユーザーに対し、その企業が繰り返し広告を配信する「リターゲティング」も可能になった。その効果の高さから、「広告主は皆リターゲティングをやりたがる」(国内ネット広告事業者幹部)。
ログインの維持などのために、表示しているウェブサイトが発行するクッキーを「ファーストパーティクッキー」、広告配信業者がウェブサイトにタグを埋め込んで収集するのが「サードパーティクッキー」と呼ばれる。今回クロームで利用できなくなるのは、サードパーティクッキーだ。
このクッキーが活用できなくなれば、ネット上の行動を監視されているとユーザーが感じる場面は減る一方、ターゲティング広告の精度は落ち、自分の関心からかけ離れた広告が頻出する可能性がある。
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