グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋

ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に

クッキーを活用した広告配信プラットフォームを手がける企業は打撃を受けそうだ。「サードパーティクッキーが使えなくなると、1人ひとりのユーザーをピンポイントで特定することはできない。リターゲティングが難しくなる」。広告配信を手がけるマイクロアドの松田佑樹執行役員はそう話す。

リターゲティングビジネスで成長してきたフランスの広告大手クリテオの株価はグーグルの発表後、前日比約16%安と急落した。同社は急きょ、「グーグルの発表は全面的に支持する。個人識別のソリューションはクッキー以外にも広げている」とするコメントを発表した。

マイクロアドはクッキー活用が困難になることを見据え、近年リターゲティングビジネスを縮小。興味・関心が似たユーザーを集団でまとめ、ターゲティングする方式を拡大しているという。

一方で、広告やプライバシー問題に詳しい一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの寺田眞治常務理事は、「日本のアドテク(広告技術)業界はまだまだサードパーティクッキーに依存したまま。ブラウザで使えないとなると対応せざるを得なくなるが、代替するソリューションをすでに提供している海外企業に顧客を奪われる可能性がある」と指摘する。

それでもグーグルの地位は不変か

もっとも、広告が売上高の8割を占めるグーグル自身への影響は限定的とみられる。検索やEメール、地図、動画など、自社サービスのユーザーアカウントから多くのデータを集めている。フェイスブックも同様だ。「自社でデータを集めているプラットフォーマーはやはり強い」(前出のプリンシプル中村常務)。

グーグルは現在、クッキーに代わるターゲティングや効果測定の機能を広告事業者向けに開発中で、集団単位でのターゲティングに注力するとみられる。この機能を広告配信における業界標準にする取り組みも進める。

アップルのサファリなどのブラウザはクッキーを一元的に禁止する措置を講じているが、広告ビジネスが主であるグーグルは、ウェブサイト運営者が広告で稼げる枠組みを維持したい考えだ。

クッキーを使わず、個人を特定しない形のターゲティングは徐々に広がりつつある。閲覧中のウェブサイト内の画像をAI(人工知能)が分析し、関連する広告を表示したり、コンテンツのテキスト情報とマッチングした広告を見せたり、といった仕組みも登場している。

欧州の一般データ保護規則(GDPR)や、今年1月に施行したアメリカ・カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)など、個人情報保護をとりまく規制は各国で厳しくなる一方だ。日本の個人情報保護委員会も、クッキーに関する規制を今後強化する方針。広告業界は今後変革を迫られる場面が増えそうだ。

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