Eメールの時代は終わる?「Slack」の隠れた威力 CEOが語る経営、ものづくり、生い立ち(前編)
Eメールの時代は終わりを告げるのだろうか。ビジネスチャットアプリを手がけるアメリカのスラック・テクノロジーズの勢いはそんなことも感じさせる。2014年2月にパソコンやスマートフォン向けにアプリの提供を始め、日本語版は2017年11月に始まった。今や世界で1200万人以上のデイリーアクティブユーザーを抱えており、このうち約5割はアメリカ以外だ。課金企業数は約10万社に達した。
昨年8月までにソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから約14億ドルを調達し、企業評価額は71億ドルに到達。評価額10億ドル以上の未上場企業、ユニコーンの代表格となっていた。そして今年6月にはニューヨーク証券取引所に上場。新株発行による資金調達をしない「ダイレクトリスティング(直接上場)」という手法を選び、注目を集めた。
グループチャットが基本、多数の外部連携も
スラックでのコミュニケーションは、基本的に「チャンネル」というトークルームで行われる。プロジェクトや部署などさまざまな単位でチャンネルが作られ、通常のチャットと同じようにやりとりが時系列で表示される。1対1で1通1通のやりとりになるメールと異なり、チャンネルのテーマごとに大勢でやりとりがしやすくなる。
さらに1800を超える外部のアプリとも連携。ストレージサービスの「ドロップボックス」にあるファイルを直接スラックのチャンネルに送ったり、スラック上で簡単なコマンドを打てば、「NAVITIME」の乗り換え経路検索ができたりする。今年9月には「共有チャンネル」という機能の正式提供を発表。従来のスラックは社内でのやりとりが主だったが、この機能を使えば、取引先など社外ともやりとりができる。
一躍世界的企業に成長したスラックを率いるのは、スチュワート・バターフィールドCEO(最高経営責任者)だ。バターフィールド氏は写真共有サービスの「Flickr(フリッカー)」を創業し、アメリカのヤフーに売却。その後立ち上げたゲーム開発のスタートアップで社内向けに作ったチャットアプリがスラックの原型だ。カナダ出身で、ヒッピーの両親に丸太小屋で育てられたという異色の生い立ちもある。
一方、スラックの株価は上場以降、大きく値を下げている。今年9月に来日したバターフィールド氏に、スラックが目指す世界とその戦略、プロダクト開発の理念、上場の意義や株価に対する考えなどについて直撃した。前後編でインタビューをお届けする(後編は11月15日に配信予定)。
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