Eメールの時代は終わる?「Slack」の隠れた威力 CEOが語る経営、ものづくり、生い立ち(前編)

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――これまではスタートアップや社内のエンジニアチームといった、小規模な使われ方が多かったと思いますが、足元では万単位の従業員を抱える大企業への導入も増えています。事業展開はどう変わりますか。

使う人が増えれば、プロダクトに求められる要件も複雑になる。8人しかいない職場だったら何の苦労もなく使いこなせる。それが8000人になったら、そうはいかない。そこで大企業向けの「エンタープライズグリッド」というプランを作った。

通常は1つの組織において、1つの「ワークスペース」を作る。そのワークスペースの中にいくつものチャンネルが作られる。ただ大企業向けの場合は、企業の中に複数のワークスペースを設けることができる。ワークスペースの間を「共有チャンネル」でつなぎ、実際の組織を模したような構造がスラック内にも作れる。

さらに規制への対応も必要だ。金融機関であれば従業員がメッセージを削除したとしても、すべて保存しておかなければならない。ヨーロッパの企業であればヨーロッパ域内にデータを保管する必要がある。

「共有チャンネル」機能の強み

――導入の作業も大がかりになりそうですね。

そのとおり。例えばアメリカのオラクルが5万人の社員にスラックを導入した。最初は1000~2000人が使い始め、わずか8カ月で5万人規模に広げなければならなかった。「カスタマーサクセス」という顧客への導入を支援するグローバルのチームが入り込み、会議室でまず管理職の人たちに教え込む。その後に各人が自分の部署に持ち帰り、広げていく。

――これまでは社内のコミュニケーションが中心だったスラックにとって、「共有チャンネル」機能の展開は大きな意味を持つのでしょうか。

スラックを使うメリットが、より大きな円で広がっていくと期待している。Eメールを丸ごと取り替えてしまうものではない。新たに物を売り込む営業はチャットよりもメールが適している。とはいえ、緊密な連携が必要なパートナー同士にはスラックが最適だ。

業界や企業ごとに異なる理由で使われることになると思う。シリコンバレーにある法人向けソフトウェアを手がける企業では、プレミアムなカスタマーサポートを提供するために使われている。ソフトウェアベンダーと顧客をつなぐ手段になっている。

共有チャンネルができる前は、スラックの監査人であるKPMGにはゲストアカウントを割り当てていた。KPMG側の責任者であるパートナーは毎年同じだが、部下として働く会計士は変わる。けれども監査で聞くことはあまり変わらない。チャンネルがあれば、過去にどんな質問をして、経理部がどう答えていたかの記録が残り、管理がしやすくなる。これはメールではできないことだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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