中国では、生鮮食品EC(電子商取引)のスタートアップ企業に有力投資ファンドからの投資が相次いでいる。その1社である叮咚買菜(ディンドンマイツァイ)は5月12日、総額3億3000万ドル(約360億円)のシリーズD+(プラス)の資金調達を完了したと発表した。リード投資家は日本のソフトバンク・ビジョン・ファンドだ。
これで、叮咚買菜は過去2カ月のうちに累計10億3000万ドル(約1119億円)を調達したことになる。同社は4月6日、投資ファンドのDSTグローバルとコーチューマネジメントがリード投資家を務めたシリーズDで7億ドル(約761億円)を調達したばかりだった。
今年2月には、ブルームバーグが「叮咚買菜は早ければ年内にアメリカ市場でのIPO(新規上場)を予定しており、株式の発行についてアドバイザーと協議を進めている。資金調達額は少なくとも3億ドル(約326億円)になる見込みだ」と報道していた。
叮咚買菜の運営会社は2014年に創業し、当初は「叮咚小区(ディンドンシャオチュー)」の名称で地域コミュニティー向けに生活情報やサービスを提供するソーシャルプラットフォームを展開していた。その後、2017年5月に叮咚買菜に改名し、生鮮食品のネット販売へと業態転換を図った。
配送エリアごとに小型倉庫を複数配置
叮咚買菜は、市街地の配送エリアごとに「前置倉庫」と呼ばれる小型倉庫を複数配置している。ユーザーがアプリを通じて商品を注文すると、この前置倉庫から最短29分でユーザーの手元に配達する。すでに上海、北京、深圳、広州、杭州など29の大都市でサービスを展開している。
ユーザーの利便性が高い一方で、前置倉庫を通じた配送には課題もある。(郊外に大型倉庫を構えて商品を届ける従来型のビジネスと比べて)、物流コストがかさむからだ。
さらに地域によっても状況は異なる。大量の注文が見込める大都市では、規模のメリットで採算は比較的とりやすい。一方で、中小都市では規模のメリットが低下するうえ、消費者は配送時間の短さよりも価格面を重視する傾向がある。商品の調達から配送まで自前で担う叮咚買菜は、そのコストもすべて負担しなければならない。叮咚買菜が損益分岐点を超えられるか、市場関係者は注目してきた。
叮咚買菜は、明確な回答はしていないものの「当社のビジネスモデルにおけるコスト抑制のポイントは、2つある。1つ目は産地直送による中間流通のカット、2つ目は取引データのモデリングから、需給パターンを精緻に分析することだ。現在は売り上げの予測精度が90%以上に達し、売れ残りによる損失率はわずか1%にとどまる」と説明している。
(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は5月12日
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