思春期の子に手こずる親は本質を押さえていない 「干渉しない」は投げやりになることではない

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実は、これらの言葉を使うときは、その意味から一歩踏み込んだ話をしないと、誤解される形で伝わってしまうことがよくあります。

「干渉しない、手放す、諦める」というのは、「もう子どものことは、どうでもいいと思ってください」とどこかマイナスな感じで投げやりになることではなく、「今のこの子の状態で十分満足」「健康でいてくれてありがたい」という満足、感謝の気持ちを伴うプラスの状態なのです。

「干渉してしまう、手放せない、諦められない」という状態は、現状に満足できず、「もっと、もっと」という気持ちが出ている状態のことが多いと思います。

それが子どもへのプレッシャーとして伝わり、とくに思春期の子は敏感にそれを感じ取ってしまいがちなのです。

「満足、感謝」と「干渉しない、手放すことのつながり

しかし、そこに「満足、感謝」という気持ちが加わると、意味が一変します。いにしえの言葉に「足るを知る」「足るを知る者は富む」という言葉があります。そこには満足、感謝というニュアンスが含まれています。

さらに、「諦める」という言葉は、「明らかにする」という言葉と同源だといいます。つまり、明らかになることで、諦めることができると解釈もできます。これを、子育てに当てはめると、子どもの本来の姿(ありのままの姿)が明らかになると、「もっともっと」という気持ちを“諦める”ことができるということです。

したがって、「眼の前にいるわが子が、今ここにいてくれるだけで感謝」というある意味“究極の満足、感謝”をすることが、「干渉しない、手放す、諦める」の本当の意味であると筆者は考えています。

以上3つの理由について書いてきました。

親が子どものことを心配し、よりよくなってもらいたいという気持ちが出ることはごく自然なことです。しかし、それが強すぎると、思春期や反抗期にある子どもには曲解され、逆に作用することもあります。

ですから、「干渉しない、手放す、諦める」という言葉が使われるのですが、その言葉を表面的、感覚的にとらえてしまうと、親側のストレスが増大するだけでなく、親子関係が悪化する可能性もあります。

焦ることなく、現状の子どもへの満足、感謝の気持ちを根底に置き、そのうえで「干渉せず、手放す」ということができれば、自然な態度と言葉で子どもに接することができるかもしれません。そうしていって「いつの間にか子どもの行動が変化していた」というケースをこれまでいくつも経験してきました。以上、今後の参考になれば幸いです。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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