アンテナ、「スマホの絶対メディア」への挑戦 群雄割拠のニュースアプリ市場<その3>

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IPOについては独特のスタンスだ。「ついこの前、マクロミルを非上場化していることもあり、グライダーアソシエイツの上場は考えていません。資金を調達できるのは時価総額の10%程度と考えると、低い金利で銀行から借り入れた方がいいのではないかと」。

高いところへ飛び上がるために

米国では上場をしない選択する企業が増えているとも指摘する。「非上場企業の企業評価はかなり大きくなっているが、多くの企業が上場をしないと思う。混沌としていて何が起きるかわからない今のような時代は、四半期毎に決算報告しなければならない上場企業より、身軽で経営の舵取りがしやすいからです」。

非上場であることのメリットについて、社名のグライダーになぞらえて次のようにも説明した。「上昇したら気流がよくなかった。その場合、いったん高度を下げる必要がある。ところが、その場合に逐一、株主に説明をする、となると本当に大変なことになってしまう。適宜、旋回をしたり、急降下をしたり、ということをやって、最終的にはものすごく高いところへとあがっていきたい」。マクロミルの非上場化を経験した杉本氏だからこそ、その言葉には重みがある。

「何かを探すときにグーグルで検索する」「PCを開いたらまずヤフー」という時代が、いつまでも続くとは思えない。「スマホをプラットフォームにしたメディアを創りたい」というアンテナの構想は、きわめて野心的なものなのだ。グノシーなど各社が上場を目指している中、非上場を選択するアンテナが数年後どのような立ち位置を築いているか、大変興味深い。

(撮影:梅谷秀司)

【梅木雄平のスタートアップチェック(各項目を1~5点で採点)】
●経営陣:4.5 マクロミル創業経営者、杉本氏は長年の経営経験と、ユーザー感覚を持ってして、これからスマホ市場はますます不確実性が増すと判断している。その時代において、上場目指さない経営スタイルは非常に合理的な判断である。
●市場性:4.0 主にファッション雑誌のスマホ最適化であり、雑誌に出稿していた広告主を取れる。ファッション雑誌の市場の一部を取ることができ、それなりの規模感であるといえる。
●利益率:4.2 今回の4サービスの中でも、最もブランド広告と相性が良いと判断。マクロミルとのリサーチ事業での取引もあることから、比較的高い単価のナショナルクライアントを獲得しやすく、収益は安定するだろう。
●競合優位性:4.0 国内では類似の雑誌コンテンツの見せ方をスマホに最適化したアプリで巨大なメディアは存在しない。
●海外展開力:3.4 まだ始まっていないため、具体的な言及はできないが、海外ではFlipboardが直接の競合にあたり、競争しなければならないのは大変であろう。
●総合点:4.1 マクロミルからの追加投資もあり得るかもしれないが、自社で上場は目指さない、柔軟な経営体制を志向。変化が激しい時代において、その判断は吉と出ると予測する。特に20代から30代女性ユーザーの中でのシェアを徐々に高めていき、広告売上も付いてくるだろう。 
●予想EXIT:非上場を維持
●推定時価総額:2016年内に120億円
●推定根拠:2013年8月に約60億円の時価総額で15億円をマクロミルから調達。非上場を維持するため、無理に時価総額を上げる必要はない。TVCMなどの先行投資で「宣伝費>広告収入」が続く場合は、また大型増資が必要になり、次のラウンドで時価総額が最低でも2倍程度は上がると予測した。ただ、上場は目指さないため、VCからの資金調達は考えにくく、マクロミルかシナジーのある事業会社が受け皿になるだろう。

 

梅木 雄平 The Startup編集長

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うめきゆうへい

慶應義塾大学卒業後、サイバーエージェント子会社にてベンチャーキャピタル業務などに従事。複数のスタートアップ企業での事業経験を経て、2011年フリーランスとして独立後2013年に株式会社The Startupを設立。スタートアップ業界のオピニオンメディアThe Startup編集長を務める。著書に『グロースハック』がある
 

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