「萌えキャラとして働く」彼女が流した涙の意味 「職業=自分の本名」支えたマーケティング思考

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どうするのがいいかを考えていたのですが、実際問題として、お客さまからは「戸倉さんに来てほしいんじゃないんだ、クラウディアさんにクラウドの説明をしてほしいんだ」というリクエストをいただくことも多く、答えを見出すことができませんでした。

そうこうするうち、私の本名が「クラウディア窓辺」だと思い込む人が社内外にも増えてきてしまい、年賀状が「クラウディア窓辺」の名前で届くなど、支障も出始めてきました。そこで2016年ぐらいからは萌えキャラを控えめにし、本名でも活動するようにしました。

2018年5月に日本マイクロソフトのテクニカルエバンジェリストから、日本IBMに入社。現在、カスタマーサクセスマネージャー(Architect)に従事し、日本企業におけるDX推進に欠かせないコンテナ技術やハイブリッドクラウドの活用推進に務める。テックカンファレンス、セミナーへの登壇多数。著書に『DevRel エンジニアフレンドリーになるための3C』(翔泳社)、『無料ではじめるWindows Azure×WordPress超入門』(インプレスジャパン)がある。2018年10月から月刊『Software Design』に「Visual Studio Code快適生活」(技術評論社)を連載(撮影:今井 康一)

私は、あらゆる人たちに、どんどんデジタルに興味関心を持ってもらって、仕組みを理解できる人を増やすことが絶対に必要だと感じ、そのための活動をしたいと思っていました。しかしながら、「クラウディア窓辺」のイメージを断ち切らないと、本当にやりたいことができないとも感じていました。

そこで、当時いちばん注力されていたテクノロジーを使った、ビジネス的にちゃんとデプロイできることがエンジニアとして確信できる事例ができたタイミングで卒業しようと決意し、その達成をもってMSを退社しました。

一度、自分を「何もない状態」にしたかったのです。その際、ブログで‟「職業・戸倉彩」はじめました”と告知しました。

エンジニアが会社を辞めるときは「退職エントリ」を書かれることが多いのですが、退職したことを知ってもらうよりも、ポジティブに人と関わっていきたいと思いました。だから、これから私が何をやりたいと思っているのか、何を伝えていきたいかを表明することが先決だと考えたのです。

会社で働くことはもちろん職業の1つです。しかし、私が職業と捉えたのはお金を儲ける行為だけではありません。プライベートでやっているコミュニティー活動、母としての子育て、他にも自分がやるすべてのことを職業ととらえ、自分は一生、命がある限り、「戸倉彩」という職業をやる、会社の冠がなくても自分らしく生きていくと宣言したのです。

「やりたいこと」と「会社が求めること」のズレ

萌えキャラに全力投球していた自負はありましたが、エバンジェリストとしては悔しい思いもたくさんしました。会社から売り込んでほしいと言われる技術と、自分が社会にとってやったほうがいいと思う技術にはギャップがあることが少なくなかったからです。

例えば、クラウドサービスの売り込みに際して、1つのクラウドサービスですべてのシステムを構築することはほぼ不可能です。だから本当は1人のエンジニアとして、お客さまにはマルチクラウドやハイブリッドクラウドを提案したい。でも、会社から「まずは自社のサービスを広めることが先決だ」と言われてしまうと、ぐうの音も出なくなってしまいます。

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