野村、アメリカの"大損"で新戦略に漂う暗雲 顧客との取引で20億ドルの損失が出る可能性
奥田健太郎グループCEOが掲げてきた「パブリックからプライベートへ」という戦略も見直しを迫られるかもしれない。
野村が展開する「プライベート」には2つの意味がある。1つは上場株式に代わる資産の活用で、非上場株式などの取り扱い強化が代表例だ。資産運用会社のスパークスとの提携で非上場投資法人の上場を計画しており、こちらは比較的順調に進んでいる。
もう1つは、従来の画一的なサービスにとどまらず、顧客1人ひとりのニーズに合わせた投資のアドバイスを提供する取り組みだ。高度な資産運用はもちろんだが、事業承継や相続など、扱う分野は幅広く、欧米などで主に富裕層向けに展開されているビジネスモデルに近い。
中でも中核となるのが、2020年6月に野村証券に立ち上げたCIO(チーフ・インベストメント・オフィス)グループだ。機関投資家向けと同等のサービスを法人オーナーなどの営業部門が担当する顧客に提供する。また、野村では別途預かり資産の一定割合を報酬として受け取る仕組みの導入も検討している。
プライベートビジネスに暗雲
今回の問題は野村がこれから強化しようとしていた「プライベート」の領域で発生した。アルケゴスはヘッジファンドばりのハイリスク・ハイリターン投資を行っていたようだが、富裕層が資産運用を行うファミリーオフィスであったために規制が緩く、保有資産の内訳などの開示がなかった。
今回の一件で金融当局は個人の資産でも資本市場を揺るがす可能性があると改めて認識したはずだ。より厳格なリスク管理を求められることになれば、金融機関にとっては収益機会が減少することになる。国内では、野村HDが構想するプライベート領域での新たなビジネスモデルの展開に、金融庁が待ったをかける可能性すらある。
グループCEO就任から約1年。奥田CEOは今年6月の株主総会後に野村証券の社長も兼務する予定で、グループを指揮する権限がさらに拡大する。4月27日に予定される決算発表に合わせて、アメリカで起きた不測の事態をどのように説明するのか。事態の収拾と今後の経営戦略の在り方が問われており、1つ目の正念場を迎えている。
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