野村証券が規制緩和に違和感を抱く決定的理由

「ファイアーウォール規制」の緩和は是か非か

野村証券などは議論が進むファイアーウォール規制の緩和に異議を唱えている(撮影:尾形文繁)
日本の金融業界の大きな転換点となるのか。今、規制緩和の議論で「ファイアーウォール規制」が大きな注目を集めている。これは、同一グループ傘下の銀行と証券は、同意なしに顧客の情報を共有してはいけないという規制だ。
きっかけは2020年6月に自民党政務調査会の金融調査会がとりまとめた提言だった。そこで「外国法人顧客に関する情報の銀証間ファイアーウォール規制の対象からの除外等について」として取り上げられた。
さらに7月に閣議決定された政府の成長戦略フォローアップには、「国内顧客を含めたファイアーウォール規制の必要についても公正な競争環境に留意しつつ検討」と検討範囲を広げる形で記された。現在も金融庁の金融審議会で議論が続いている。
ファイアーウォール規制を緩和する議論が浮上した背景には、メガバンク各行からの「強い要望」(複数の証券会社幹部)があったとされ、金融審議会でも全国銀行協会などが規制の緩和を強く求めている。
一方、規制緩和に強い懸念を示す団体がある。野村証券や大和証券などが参加する「資本市場の健全な発展を考える会」だ。なぜ、規制緩和が時期尚早と考えるのか。中でも規制緩和に強い違和感を持っているのが野村証券だ。同社の副社長で野村資本市場研究所の社長も務める飯山俊康氏を直撃した。

「お客様の目線」が抜け落ちている

――ファイアーウォール規制の緩和をめぐって金融業界の意見が割れています。しかし、結局のところ規制緩和を進めたい銀行と、既得権益を守りたい証券の争いなのではないですか。

「10年に1回の伝統の1戦ですね」と言う人がいるんですけど(笑)。外から見ているとそう思うのかもしれないが、少なくとも私はそんな意識はない。

銀行対証券で業際問題になったのは30年前の話だ。そのころから考えれば、銀行も証券も大きくビジネスモデルが変わった。今では、銀行同士、証券会社同士を比較してもそれぞれやっているビジネスは大きく異なる。銀行や証券をひとくくりにして、(互いの業務がかぶる)業際問題として捉えることはできない。

このタイミングでファイアーウォール規制の議論を始めたのは、私たちではない。ただ、われわれは資本市場から糧を得ているし、お客様とのビジネスで成り立っているので、どうでもいいというわけにはいかない。

そこで、私たちは、(規制緩和の議論には)お客様の目線が抜けていませんか、資本市場の健全性を阻害するような懸念がありませんか、と問いかけている。きちんとした議論をしてほしいだけだ。

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