野村証券が規制緩和に違和感を抱く決定的理由 「ファイアーウォール規制」の緩和は是か非か
――優越的地位の濫用についてはどう考えていますか。
発行体なり、お客様が、(金融機関と)対等な立場でいて、自分で(ファイナンスなどの)判断ができる状況であればよい。例えば外資系の企業については、邦銀が必ずしも優越的地位にいるわけではない。本来ファイアーウォール規制が抑止しようとしている趣旨の範囲外だと思うので、そこは柔軟に緩和すればいい。
――銀行側は国内の企業に対しても「優越的地位の濫用はありえない」と主張しています。
金融審議会に資料を提出したが、実態として企業からこういう意見(企業が規制緩和に対する懸念を持っていること)があるんだと認識するところから、議論を始めるべきだ。そうしないと、ファイアーウォール規制をなくした場合に、どういうふうに利益相反や優越的地位の濫用を抑止するのかという議論に進めない。
企業といってもいろいろある。借り入れに依存しないで済んでいるようなところは、優越的地位に銀行がいないケースもある。自分の情報は自分で管理します、勝手にやらないでねというのが強いと思うし、必要に応じて、(銀行や証券会社と個別に)守秘義務契約を結ぶはずだ。
借り手にとっての認識は違うはず
一方で、大企業でも借り入れに依存しているところもある。特に足元では新型コロナウイルスで借り入れが増えている。銀行さんは「われわれはもはや優越的地位にはないんだ」と言い切るが、借り手の観点はちょっと違うと思う。
昔に比べればというのは、確かにあるのかもしれないが、今この瞬間、お金を借りている人たちはどう思っているのか。(銀行と)どういう付き合いをしているかを見れば、まったく優越的地位にないんだという認識は違うのではないか。
――ファイアーウォール規制はアメリカやヨーロッパにはない日本独自の規制だから、撤廃するべきだという意見も根強くあります。
いわゆるユニバーサルバンクですよね。確かに何でもできますけど、それは日本(の金融業界)が目指したい姿ですか?
イギリスはアメリカに近いので、資本市場が相当育っているが、ほかのEUの国はどうですか。各国の株式市場のGDP比率での時価総額をみてください。日本と同等かそれ以上に間接金融が強い。
ポストコロナで資本の供給がより求められていく中で、欧州みたいに(銀行などの間接金融の依存度が高い状況に)なりたいと思っている人がいるのかどうか。
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