「汚部屋そだちの東大生」描いた彼女の壮絶半生

就職してからようやく自分を客観視できた

もちろん修理業者を呼んで直したり、または買い直したりしたほうが、精神的にも経済的にもいいに決まっている。だが汚部屋だから業者は呼べなかった。

だから何年もそのままの状態で過ごした。

「洗濯機はあって、洗濯して適当な場所に干していました。でも干した服も、そのうちゴミに埋もれてなくなっていました。実質使い捨てでした。だから下着や靴下は3枚数百円で買えるような安いものが多かったです。軽く掘り起こすと、すごい枚数のパンツが出てきて

『こんなにいたのね!!』

という気持ちになりました。

たまに母から『片付けて』と言われることはあったのですが、それは整理整頓してという意味で『物を捨てて』という意味ではなかったんですね。例えば10年前の新聞でも捨てようとしたら『あとで読もうと思っていた』とか言われてしまいます」

勝手に捨ててもバレないけれど、明確に量が減ったらさすがに気づいて怒り出すかもしれない。

そもそもハミ山さん自身、部屋を片付ける習慣がついていないのだから上手に掃除ができるわけもなかった。

もちろんそのような状況で、清潔に保てるわけがない。ゴミの下には大量の虫が湧いていた。

ハミ山さんの実家の写真(撮影:ハミ山さん)

「今だったら、ゴキブリが1匹いただけで『ギャー!!』って思うんですけど、当時は『ああ、いるなあ』くらいにしか思わなかったです。寝ているときに顔の上をゴキブリが歩いていることもよくありましたけど、それもなんとも思ってなかったです。

大小さまざまなゴキブリが何百匹、何千匹っているとなんだか慣れちゃうんですね。完全に感覚が麻痺していたんだと思います」

『汚部屋』『ゴミ屋敷』はテレビでもよく取り上げられる題材だ。そういう番組を見たら、ハミ山さんも

「自分の家もゴミ屋敷かもしれない?」

と気づいたかもしれない。

しかし部屋にあった大きなブラウン管のテレビは小学生の頃に壊れ、とっくにゴミに埋もれていた。高校時代はインターネットもできなかったので、外部にアクセスする手段はほとんどなかった。

得意な絵を生かして東京藝術大学へ進学

ハミ山さんは小さい頃から絵が得意だった。だから芸術大学に進学しようと思った。

「絵を描くのが好きだったか?と言われると疑問です。比較的得意で、それをやっていると褒められやすい。これをやったら得をするんだな、と考えてやっていたと思います」

そんな軽い気持ちで続けていた美術だが、ハミ山さんは東京藝術大学を受験し現役で合格した。東京藝術大学はかなり倍率が高く、進学するのがとても難しい大学の1つだ。

「すごく嬉しかったですね。大学って自由じゃないですか? そこではじめて自由を知りました。こんなに楽しい時間があるのか!!って毎日が楽しかったです」

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