50代で「定年前転職」を選んだ人の切実な本音 「定年70歳時代」をあなたはどう生きるか

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「定年70歳時代」が到来、「老後レス」をどう働きながら生きていくのか──(写真:プラナ/PIXTA)
この4月1日から、「70歳まで働く機会の確保」を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法などの関連法が施行されました。現在の65歳を5年延長した「定年70歳時代」の到来です。多くの勤め人にとって「老後の始まり」でもある定年が70歳に──。ますます「老後」が遠ざかり、私たちは「老後レス」を生きることになります。
それでも、あえて積極的に「老後レス」と向き合う人たちがいます。定年前に転職を決断した中高年(シニア)たちです。朝日新聞特別取材班の『老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代』から、そんな彼らの働き方と生き方を紹介します。
(本記事で言う「高齢者」は65歳以上を指します。また登場する人物の年齢は取材時点のものです)

波平さんは何歳か

現在の法律は企業に対し、①定年廃止、②定年延長、③再雇用などによって、従業員が65歳まで働ける機会を作ることを義務づけています。今回の改正法は、努力義務ではありますが、これを70歳まで延長するものです。現在の3つの対応に加え、①別の会社への再就職、②フリーランス契約への資金提供、③起業の後押し、④社会貢献活動への参加支援の4つも選択肢として認めます。

定年と言えば、かつては55歳でした。それが60歳になり、65歳に引き上げられ、ついに70歳に達してしまいました。この間の推移を見てみましょう。

まず、国民的漫画「サザエさん」の磯野波平を思い浮かべてください。サザエ、カツオ、ワカメの父で、一家の大黒柱。はげ上がった頭頂部に髪が1本、趣味は盆栽、家ではいつも和服姿でくつろいでいます。孫のイクラちゃんにも恵まれ、どう見てもシルバーの雰囲気です。現代の感覚なら60代後半のイメージでしょう。

しかし波平さんは現役のサラリーマンで、作中では54歳という設定なのです。これには作品が描かれた時代背景が強く関係しています。朝日新聞で4コマ漫画の連載が本格的に始まった1950年代は55歳定年が一般的でした。そのため、定年間近の波平さんは54歳とされたわけです。

この55歳定年は、戦後から1980年代まで続きます。1994年に高年齢者雇用安定法が改正され、定年を60歳未満にすることが禁じられました。続いて2013年からは、65歳までの雇用を確保するため、前述の措置(定年廃止、定年延長、再雇用)をとることが企業に義務づけられます。そして政府は「一億総活躍」のかけ声の下、今度は70歳まで雇用を広げる法改正を実施しました。

定年が先に延びれば、「老後」に到達するまで働く時間も延びることになります。そこで大切なのは、このまま今の勤務先に残るのか、あるいは別の道があるのか、自身にとって最善の選択肢を早めに考えておくことではないでしょうか。

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