50代で「定年前転職」を選んだ人の切実な本音 「定年70歳時代」をあなたはどう生きるか

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2013年6月に退職。青森出身の横山さんは「東北の被災地で力になりたい」と、役立ちそうな免許や資格の取得に全力を挙げました。整体ボディーケアセラピストとして働いたこともあります。

そんな横山さんに転機が訪れたのは2014年の春。三陽商会の先輩から「川内村の温泉施設を手伝わないか」と誘われたのです。二つ返事で引き受け、大車輪で働きました。そして、この職場でのさまざまな出会いから、第2の人生が本格的に幕を開けます。2016年6月、横山さんは川内村に移住します。

今、横山さんは「あぶくま川内」の実質的な経営者です。施設で販売するのは1匹500円のイワナや入浴料600円の日帰り温泉など。一方、三陽商会時代に扱った商品は1着10万円のコートや4~5万円のスカート。単価の差は歴然です。

ただ、三陽商会の商品には価格に見合う理由がありました。それは店舗のラグジュアリー感や丁寧な接客といった、顧客第一の「ホスピタリティー」です。横山さんは川内村の施設でも、このホスピタリティーを大事にしようと日々、奮闘しています。

「この年齢で、これだけやりがいのある仕事に出合えたことに感謝します。元の会社にしがみついていたら、このモチベーションは維持できなかったでしょう。いったん、すべてをリセットして、ゼロからスタートしたことが大きかった」(横山さん)

営業職から農業、地域おこしへ

最後に紹介するのは、製薬会社勤務から農業に転じた元部長のケースです。会社勤めを辞めて農業を中心とする地域の社会に飛び込むのは、企業間の転職とはまた違った覚悟を求められるはずです。何が彼の決断を後押ししたのでしょう。

2016年9月の朝、外資系製薬会社ヤンセンファーマの部長職だった西村暁良(にしむら・あきら)さん(53歳)は、JRの駅からオフィスへ歩く途中、ふと思いました。

「辞めようかな」

その日のうちに上司に話し、年末には部下たちに伝え、2017年3月末に退職。仕事に不満があったわけではなく、仲間にも恵まれていました。でも、もう製薬業界に戻るつもりはありませんでした。

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