前代未聞の事態、マツダが東海ゴムを提訴 リコールの負担で自動車メーカー同士が争う

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リコールを巡り自動車メーカーが部品メーカーを損害賠償で訴えるという、日本の自動車業界では前代未聞の事態が起こった。マツダは6月、パワーステアリングの不具合でリコールを行ったことに関し、部品の製造過程に原因があるとして、当該部品を供給した東海ゴム工業に対して、修理にかかった費用など約156億8800万円の損害賠償を求める訴えを、広島地方裁判所に起こした。国土交通省のリコール担当者は「リコールで車両メーカーが部品メーカーに損害賠償を起こすなど、聞いたことがない」と驚く。

マツダは取引先の東海ゴムに156億円超の損害賠償を請求した(写真はリコールの車種の1つでもある「プレマシー」)

問題となっているリコールは、2009年から2010年にかけて、マツダが「アクセラ」「ビアンテ」「プレマシー」のパワテアが効かなくなることがあるとして、国内外約59万0319台を回収・修理したもの。マツダが国交省に届けた資料では、パワステの油圧配管の製造工程が不適切で内部にさびが発生、そのさびが原因で油圧ポンプなどに不具合が起き、パワステが効かなくなる、としている。

 広島簡裁の調停は不発に

しかし、マツダが主張する原因に対して、東海ゴムは「配管のさびが、パワステが効かなくなる原因ではない」真っ向から反論している。マツダと東海ゴムは、共同で原因の究明にあたってきたものの、双方が納得のいく結論に至らず、2012年にマツダが広島簡易裁判所に調停を申し立てていた。だが、その後の2年越しの調停も不調に終わり、今回、訴訟へと至った。

 東海ゴムは「損害賠償額は訴訟で初めて出てきた。調停の場では巨額賠償の話はなく、びっくりしている。賠償金額の算定根拠も明確ではなく納得できない」と主張する。東海ゴムにとって、賠償金の額は、2015年3月期の営業利益計画160億円に匹敵するという、巨額の水準。容易に受け入れられるものではない。一方のマツダも、「ステークホルダーに対する説明責任を果たすためにも訴訟に踏み切った」と、全く譲る気配はない。

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