もしも徳川家康が甦って日本の首相になったら 教養エンタメ小説が描く英雄たちのコロナ対応
最強内閣、最初の閣議
2020年4月1日。
家康が日米首脳会談でアメリカ大統領と共同会見する10カ月前。
世界初のAIと最新ホログラム技術で復活した歴史上の偉人たちで構成された最強内閣。その最初の閣議が行われることになった。
桔梗(ききょう)の紋が入ったよれよれの羽織に汚れた袴(はかま)。その足元は革靴である。蓬髪(ほうはつ)、長身に真っ黒に日に焼けた肌。面長の顔に切れ長の目。黒い肌と対照的な真っ白い歯。薄汚いといえば薄汚いのだが、なんともいえない人を惹き付ける魅力がこの大男にはあった。
「困ったのぅ」
落ち着きなく身体を小刻みに揺らし、所在なげにうろうろと歩き回るその男は、この最強内閣の官房長官をつとめることになっていた。名を坂本龍馬という。
幕末の動乱期、土佐に生まれた風雲児は、33年という短い生涯のうちに薩長同盟、大政奉還という大仕事を、一介の脱藩浪士の身でありながら成し遂げた。他の幕末の志士たちが〝藩〞という自分たちの限界の中で生きたのに対し、坂本龍馬は常に〝国〞という視点で駆け抜けた。その生き様はまさに近代日本の夜明けのようであった。
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