もしも徳川家康が甦って日本の首相になったら 教養エンタメ小説が描く英雄たちのコロナ対応

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木村は、消え入りそうな声で話した。彼自身、健康を害しているのは見てわかる。かろうじて立ち、気力を振り絞って息も絶え絶えに話しているという状態だ。

「要は、我らにこの流行病を収めよというのじゃな」

家康は優しく木村に尋ねる。

「はい、そして、国民の信頼を......」

木村は、家康の方に視線を移し、震える手で額の汗をぬぐい答えた。

「国民の信頼?」

家康は首を傾げた。そもそも家康をはじめ戦国大名には〝国民〞という概念がないのだ。

「はい。今の国民の政治に対する信頼は、地に墜ちるほどでございます。内閣支持率も過去最低でございます。危機の時こそ、信頼が必要だと私は考えております。この国は、災害も多く、いずれまたこのような危機に陥るでしょう。今まで、なんとかその場しのぎでやってこれましたが、このまま国民が政治を信頼していない状態ですと、いつか取り返しのつかない状況になってしまいます。この感染症により国が混乱に陥った今こそ、迅速で的確な対応で国民の信頼を取り戻すチャンスなのです」

「その国民というのはなんじゃ?」

そして豊臣秀吉が登場

家康の隣にいた小男が声をあげた。財務大臣である豊臣秀吉である。

(註:豊臣秀吉・安土桃山時代)戦国3大英傑のひとりであり、家康の前の天下の覇者。農民から天皇に次ぐ最高権威の太閤にまで上り詰めた空前の成り上がり者。大阪城に代表されるスケールの大きさ、ド派手で底抜けに明るいイメージを後世にまで残し、江戸時代前期に出版されたこの男の一代記である『太閤記』が常にベストセラーであったことからも、人気がうかがい知れる。

真っ黒に日焼けした顔にギョロリとした目とちょび髭、頭髪は薄く、かろうじて小さな髷がのっかっているという塩梅だ。〝猿〞として有名な秀吉だが、実物を見る限りはネズミといった方がぴったりだ。

「国民とは......この日本に住まう人々のことをいいます」

木村は答えた。

「なんじゃ。民のことか」

秀吉は大笑いをした。

「民なぞは、我らの言うことを聞いておればいいのじゃ。なぜ民などの信が必要なのじゃ。そんなことのためにわしらを呼び出したのか? おみゃーは」

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