組織をまとめる「真のリーダー」に必要な3要素 世の中が激しく変化しても「未来は予測できる」

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そしてリーダーに必要な3つめの要素は「旅の目的地までチームをまとめ、引っ張っていく」こと。

旗のもとに集まった人たちに思う存分力を発揮させ、ゴールに向かわせる、いわば統率力です。どんなに素晴らしい夢であっても、リーダーがその夢を実現するための具体的な道筋を示せなければ、せっかく集まった人たちもやる気を失い、離れていってしまいます。

メンバーのモチベーションを常に高い状態に保ち、さらに彼らの力を1つに束ねて同じ方向に進ませるためには、現実味のあるしっかりした経営計画が必要です。

具体的にいうと、その経営計画には「いつまでに誰がこれだけのことをやる」という工程表が明確に書かれており、なおかつそれを一つひとつ確実にクリアしていけば、最終的に自分たちの目標が実現できるとメンバー全員が信じるに足る内容になっていなければなりません。それが経営計画の本当の姿だと思うのです。

激変する世の中でも、未来は予測できる

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一般的に、夢は語れても、それをしっかりとした経営計画に落とし込める人はあまり多くはないようです。しょっちゅう経営計画が変わったり方向性がブレたりするのは、最初の経営計画=「やりたいこと」の詰めがきちんとできていないからでしょう。

会社の経営計画は日々の仕事の土台となるものですから、ここがぐらぐらしているとメンバーは不安になり、仕事に全力投球できなくなります。ブレるリーダーの下ではメンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できない、それゆえ成果も上がらないのです。

「そんなことをいっても、世の中の変化が激しいのだから、たびたび経営計画の変更を迫られるのも仕方がない」という意見もあるでしょうが、僕はそれは違うと思います。半年や1年で変えざるをえない経営計画は認識の甘さの表れです。十分なインプットとタテヨコ思考で「自分たちの立っているところ」を正確に把握できているなら、進むべき大きな方向性は変わらないはずです。風の強さまではわからなくても風の吹く向きはわかるはず、僕はそう思っています。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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