「2月頭のクラスター発生から1カ月でコロナ患者さんが2ケタ亡くなった。どんなに精一杯仕事をしていても人手が足りないし、他の病棟からも感染者が出てクラスターの終わりが見えない。このままでは命を救えない」
2月末時点においても「コロナクラスター」渦中の病院で働く、看護師の鈴木良子さん(仮名)。看護師歴は20年を超えるベテランだ。彼女は取材を受けながら、静かに泣いていた。
鈴木さんの職場は、主に非常勤の看護師で回している病棟。高齢で寝たきりの透析患者が多く、移動も自分ではほとんどしない。そんな中で起きてしまったコロナのクラスターだった。
鈴木さんは「患者さんは外部からの接触をほとんどしていないため、医療従事者を介しての感染としか考えられない」と言う。
原因に「病院全体の感染対策の甘さ」があった。感染防護服は正しく着脱しないといけないが、徹底できていなかったため感染源となった。さらに病棟の患者には認知症の人も多く、マスクを着けても嫌がってすぐ外してしまっていた。
1月20日の時点で数名だったコロナ陽性者は、2月上旬に2ケタに増え、現在はさらにその2倍近くに。数十病床のうち、6~7割をコロナ陽性者が占めている。残りの患者も濃厚接触者なので、陽性となる可能性は高い。
10都府県に発令していた新型コロナウイルス緊急事態宣言について岐阜、愛知の東海2県、京都、大阪、兵庫の関西3府県、福岡の計6府県で3月1日(2月28日まで)に解除された。首都圏の1都3県では3月8日(3月7日まで)の解除を待ち望んでいる人は少なくない。だが、医療現場は今この瞬間においても悲鳴を上げたままだ。
1月末、看護師の不足…一般患者が急変で亡くなった
1月下旬の時点では容体の悪くないコロナ患者よりも、「実は看護師不足で一般の入院患者の命が危なかった」と鈴木さんは言う。
鈴木さんの担当は難病患者が多い病棟だ。常に人手が足りず、夜勤は看護師2名で回す。コロナ陽性者が出てからは「コロナ陽性者(レッドゾーン)」担当と、「濃厚接触者(イエローゾーン)やそれ以外の患者(グリーンゾーン)」の担当に分かれるため、「コロナ患者」と「残り数十名の患者」に看護師1名ずつ配置。鈴木さんは1人で、一般患者を見て回っていた。
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