2月だけで2ケタのコロナ死に面した彼女の告白 今も看護師たちは抜き差しならない状況にある

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入院患者のコロナ陽性者が見つかった1月半ばまで、「感染を拡大させないための基本の一手段」とされているゾーニング(感染患者の入院病棟で、病原体によって汚染されている区域を分けること。汚染区域[レッドゾーン]・準汚染区域[イエローゾーン]・清潔区域[グリーンゾーン]など)ができていなかった。

「このままではいけない」とすぐに上に伝え、何とか区域の確保をした。しかし、病棟の感染対策があいまいだったため、間もなく、「レッドゾーン」「イエローゾーン」のみとなり、清潔区域の「グリーンゾーン」がなくなってしまったのだ。

コロナ陽性者担当の看護師は、このまま「レッドゾーン」とされる場所で昼食を食べるしかない状況だった。上からは「感染に気を付けて」と注意されるものの、どう注意しろというのか。「医療従事者のコロナ感染は時間の問題」とも思えた。院内感染は「想定内」と言うしかない状況だったのだ。

2月末、コロナ陽性患者が次々と病院内で亡くなった

そして2月末、院内感染でコロナがさらに膨れ上がった。感染から10日経過した人もいるが、カウントの方法が異なるのか数字は病院のホームページでは公開されていない。

前述したように入院していたコロナ陽性者は2月だけで2ケタが亡くなった。数日おきに死亡者が出た。さらに、同じフロアの他の科からも、コロナ陽性者が出始めていた。新たに発覚したコロナ陽性者が次々と鈴木さんの病棟に転棟してくるため、病床は常に満床だ。

まだまだスタッフも足りていなかった。夜勤で看護師が2名体制の場合、人数の多い、コロナ陽性者のレッドゾーン担当は激務になる。コロナ患者のなかには、呼吸状態が悪く、自力で痰が出せない人もいる。まめに痰を吸引しないといけないが、その間もナースコールが頻繁に鳴り響く。

助手は複数いてもレッドゾーンには入れないため、イエローゾーンにいる患者のオムツ交換までしか頼めない。看護師は休憩時間でもすぐ呼び出されるため、夜勤はほとんど休むことができなかった。

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