また、病棟のコロナ患者は10日経過しても血液に酸素をうまく取り込めない人が多く、急変することもあった。しかし、ナースステーション内にある酸素飽和度を監視するモニターの数は少なく、十分な観察ができない。「部屋に行ってみたら、一時的に患者の呼吸が止まっていた」という状況もあった。
看護師の中には「患者さんの死に慣れを感じ始めている」人も出てきた。これは「看護師の極度の心の疲れが原因」と鈴木さんは言う。すでに皆、メンタルもギリギリなところを踏ん張っていた。
「私だっていつコロナに感染するか、わからないけど」
現場の医療従事者たちは「自分もいつ感染するかわからない」という孤独な不安が付きまとっている。しかし、現在もコロナの現場で戦う鈴木さんは、どういう心境で日々を重ねているのか。
「『患者さんがいるから』頑張れていると思います。私なんか、ときどき更年期の症状で顔が熱くなったりすると『コロナに感染した?』と焦ったりして……。『感染したらどうなるだろう、死ぬのかな』なんてことを思うこともしょっちゅうです。そうすると急に寂しくなって、あれもしたかった、これもしておけばよかった、なんて落ち込んだりもします」
鈴木さんは「全然前向きばかりではない」とはにかんで笑う。「うちの病院はコロナ対応だからと言って、特別給料がいいわけでもないし」とも話してくれた。
「深く考えていたら、感染対策に不安のある職場になんて行けないですよ。あ、バンジージャンプに行く人と同じかもしれませんね。『ロープ切れて死ぬかも』なんて考えたらできないじゃないですか。私自身は日々『今日も仕事だ、行ってこよう』くらいの気持ちで出勤します」
「今日も患者さんが待っているから、いつも通りに行く」、そうやって、鈴木さんは懸命に日々を重ねているのだ。
「1人や2人だけでも『今つらい』など本音が言える人がいるなら、まだ大丈夫。私は気ままに一人で生きてきたけれど、やっぱり孤独に頑張るのはキツイ。でも友人でも親族でも支えてくれる人がいるなら、踏ん張れる気がします」
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