今の若者は、野球監督よりコーチを目指す? 川崎憲次郎氏に聞く「若者論」(後編)

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原田:それは現役時代のことですか?

川崎:僕は野球選手になるのが夢で、それがかなって。でもなった瞬間に、後はやめることを考えるのです。野球選手って皆が考えている以上に選手寿命が短いんですよ。やっているうちは、わからないんです。ずっとできるって思われがちだし、自分でも思いがちなんですよね。

原田:川崎さんの現役生活は何年でした?

川崎:僕は16年ですね。それでも長いほうです。当時はもし、そういうときが来たら何を思うのだろうっていうのもあったんです。それでもプロを経験して最後に思ったのが、やっぱり野球選手になってよかった、本当に一生懸命やってよかったと思えたんですよ。だからケガもしたけどまったく悔いはないんですよ。

若い選手にも悔いを残さないように、たとえ自分がケガをしたとしても、今できることを目いっぱいやってほしいのです。そこで経験したことっていうのは、必ず先になって生きるので。

たとえばケガしたとき、成績を残せないとき、いったいどうすればよかったのか。そこで得たものっていうのは、自分のその先につながったり、後輩に伝えられたりできる。そのとき、失敗だったとしても、そこで学んだことは自分でいいほうに思えることができれば、すごくプラスになると思うんですよ。もちろん全部成功してほしいけど、失敗はつきものなので、そこから何を得るかというのが、僕としてはいちばん大事なんじゃないかなと。

僕は勝ったときってあんまり覚えていないんです。打たれたり、ぼろくそ言われたり、失敗したときのほうがものすごく覚えているんですよ。

原田:川崎さんの現役時代で、最大の失敗って何ですか?

川崎:最大の失敗というか、ものすごくつらかったのが中日に移った4年間。本当に1年目からゲカでまったく投げられなくて、それはもうぼろくそでしたよ。

原田:当時、オールスターで出場できないのにファン投票で1位に選ばれて、すごく問題になりましたよね。嫌がらせというか。

川崎:そういうのも含めて、いろいろとあったんです。自分にとってものすごくつらい時期でしたね。もうやめてやろうかなと、本当にやけくそになりかけました。でもある一言で息を吹き返したのです。

その頃、名古屋球場で練習していたんです。客席からの声もほとんどがヤジですよ。でもその中で「川崎! ナゴヤドームで待っているからな!」と言われたのです。ナゴヤドームで練習している1軍に早く戻ってこいっていうことなんですけど、その一言がなければ僕はたぶん、遠からずぶち切れていたと思います。でも、そうやっていつまでもダメな自分を応援してくれている人がいるかぎり、その人のために頑張ろうって思えましたね。

どこで見ているかわからないですけど、必ずやっぱり見てくれる人はいますよ。その人のためにやるんだと思って頑張れば、いつかはいいことがあると僕は思っています。まあとにかく、悔いを残さないことですよね。ああやればよかった、こうやればよかったって言う人は周りにもいるけど、じゃあ最初からやっときゃいいじゃんって僕は思うんですよ。失敗しようが何しようが。

原田:迷って考えるなら動け、ですね。それが若者たちにいちばん伝えたいことでしょうか。

川崎:そう思います。頭で考えたってなかなかよくならないですよ。考えてよくなるなら、みんなタイトル取れますよね。

(撮影:梅谷秀司)

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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