今の若者は、野球監督よりコーチを目指す? 川崎憲次郎氏に聞く「若者論」(後編)

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原田:中間管理職は上とも下とも接さなければならないじゃないですか。今の子たちは友達がたくさんいるから、いろんな人間とコミュニケーションを取れる人は、ヒエラルキーで見ると上位なんですよ。

一方、社長はそんなに多くの人とは接しないじゃないですか。となると、彼らの中では中間管理職のほうが価値が上位で、クールだと。

川崎憲二郎(かわさき・けんじろう
1971年大分県生まれ。1988年津久見高校3年時に、ドラフト1位でヤクルト・スワローズに入団。高卒ルーキーとしてのプロ入り一年目に開幕ベンチ入りを果たし、その年24試合に登板し4勝4敗。さらにその翌年の90年には弱冠19歳ながらローテーション入りし、年間200イニングスを超える働きでチームの柱に。その後、故障を乗り越え、98年には最多勝を獲得。さらに同年、投手として最高の名誉である沢村賞を受賞。04年10月に現役引退を発表。その後野球解説者、野球指導者を経て、2013年から千葉ロッテマリーンズ一軍ブルペンコーチに就任

川崎:まあでも、間に挟まれて勉強したものってかなり大きいですけどね。上には気を遣うし、下には人の使い方というのを覚えていけるし。

原田:でも問題はそこがゴールというか、あこがれになっていることで。

川崎:そうか、それがゴールと。

原田:漫画の『課長 島耕作』は課長から始まって、結局、会長まで上り詰めていきますよね。要するにそのときに学んだことを生かしながら、もっと大きな権限を持つために次へ行くわけですけど、今の子は課長で終わり、みたいな。

川崎:その先がない。

原田:そういう意味で、上昇志向みたいなものがなくなってきていると言えるかもしれません。プロ野球の世界はどうですか。

川崎:やっぱり、それはみんな上を見ているし、他人より勝ちたいし、タイトルも狙いたいと思っていると思いますよ。でも、さっき話した自発性のこともありますけど、たぶん、本人たちはそれぞれ一生懸命やっているとは思いますが、やはり人と同じことをやっていたら、そこで終わっちゃいますよね。なにか人と違うことをしないといけない。そこはやっぱり感性の問題ですね。他人と同じような感性だと、違うことはできないような気がするんですよ。だから、ピッチャーは普通のやつにはまず務まらないですよ。

原田:そうですか。

川崎:うん。あれ、あいつなんかどこか違うなっていうやつのほうが上に行くんですよ。あの4万~5万人の観衆の中でマウンドに独りで立って、自分が投げないと始まらない。そういうポジションなわけで、やっぱり普通じゃやっていられないですよ。

原田:確かにそうとうなメンタリティがないとね。

川崎:マウンドに立ったとき、相手をよく見て、たとえばカーブ狙ってるなとかストレートを狙ってるなとか、表情や仕草で何かを感じるというのは、駆け引きとしていちばん大事だと思うんですね。それを一瞬で、判断していけるやつはやっぱり強いんですよ。

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