コロナと原発、日本の「危機管理」に通じる弱点 「小さな安心」を優先し「大きな安全」を犠牲に

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他方、新型コロナ対応でも「備え」の欠如は明らかであった。ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入港した際、PCR検査が1日当たり300~400件しか実施できず、乗客を不安に陥れた。また、2010年に新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議の報告書が出たにもかかわらず、そこで提起された保健所の強化やリスクコミュニケーション、PCR検査と医療防護具の拡充やワクチン開発体制の整備などの提言は受け入れられず、新型コロナへの対応が後手に回る結果となった。

この背景には、中東呼吸器症候群(MERS)の被害が小さく、水際対策が機能しているので国内での感染蔓延は防げるとの甘い見通しがあったこと、また、いつ起こるかわからない感染症に備えるよりも、保健所を削減して財政負担を軽くすることが優先された結果でもあろう。

平時からの切り替えの遅さ

「備え」は検査や電源車といった物資だけでなく、危機時のガバナンスへの「備え」も不十分であり、一部の危機対応部局は動くが、政府全体が「危機モード」に切り替わらないというのが第2の問題として浮かび上がる。

原発事故においては、原子力安全・保安院が規制者としての立場を維持し、検査官は事故対処に一義的責任がないとして福島第一原発の現場から離れてしまったことや、危機時のシミュレーションに使うはずであった緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の利用に文科省が消極的であったことなど、危機の時に官民を挙げてあらゆる資源を投入し、直面する問題を解決することよりも、平時の手順や常識に基づく判断を優先するという傾向がみられた。

新型コロナ対応においては、早い段階でSARS(重症急性呼吸器症候群)の姉妹種であることが明らかになったことから、新型インフルエンザ特措法に基づく新感染症のいずれでもないとして、内閣官房に設置された「新型インフルエンザ対策室」が対処せず、官邸の司令塔機能が確立しないままであった。

厚生労働省も規制者としての性格が強く、感染症対策の最前線を担う保健所は都道府県などの管轄となるため、厚労省から通知を出し続ける「通知行政」の枠組みが維持された。結果として、現場の状況のフィードバックが乏しいまま、次々と通知を出して現場が混乱することもあった。

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