光海底ケーブルの地経学的な意味
2021年1月13日、パラオ共和国コロールの大統領府分室において、パラオ海底ケーブル公社およびパラオ政府と日豪の金融機関との間でパラオ光海底ケーブルプロジェクトの署名式が行われた。
本件は昨年締結された日豪米3カ国による「インド太平洋におけるインフラ投資に関する3機関パートナーシップ」のもとで実施される最初のプロジェクトであり、在パラオ日本大使館は「自由で開かれたインド太平洋を推進する日豪米3カ国による象徴的なプロジェクトになる」と伝えている。
それに先立つ昨年7月には、RTIとNECによって、JGA(Japan Guam Australia)北ケーブル、すなわちグアムから千葉県千倉につながる海底ケーブルの完成がアナウンスされた。
すでに完成していたグアムとオーストラリアを結ぶJGA南ケーブルは、オーストラリア国立学術研究ネットワークとRTIに加えて、アメリカのグーグルが投資をして敷設された。この日本とオーストラリアを結ぶ最短距離の最新ケーブル、JGAは、デジタル時代の日本とオーストラリアの関係の新しい絆となり動脈となる。
このような日豪米の官民学による太平洋における海底ケーブルに関する活発な動きにはいくつかの地経学的な背景がある。現在まで、太平洋インターネットトラフィックの最も大きな流れはアメリカ西海岸から日本、そして、台湾沖を経由して香港、シンガポールとつながる経路である。この経路には何十本もの新旧海底ケーブルが敷設されている。
ところが、2000年以降、日本から南の部分のケーブルの切断が目立つようになった。ケーブルの切断は地震か、浅瀬であれば漁業の網や船の錨が主な原因となる。地震の頻発も事実だが、増加するこの海域の船舶の数が大きな原因と言われている。
JGA、すなわち、グアムを拠点とする日豪の新しい南北直結ケーブルは、アメリカ本土、ハワイとグアム、そして、グアムから東南アジアの東西をつなぐUS-SEA(US-South East Asia)とセットで計画されていて、上記の不安定海域を回避できる代替経路としての意味がある。
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