宇野重規「民主主義にはそもそも論が必要だ」

「デモクラシー」はいつから肯定的になったのか

宇野重規・東京大学社会科学研究所教授に「民主主義とは何か?」を聞きました(撮影:尾形文繁)
「ポピュリスト」の跋扈、旧社会主義諸国および中国など権威主義国家の台頭など、近年の世界は、民主主義という制度の根幹が揺るがされる情勢になっている。日本でも現行の政権は「民意」を正確に反映しているか、すなわち「民主主義的な」政権かという点には疑問符がつく。はたして民主主義はもう時代遅れなのか? それとも、まだ活路はあるのか?
発売から4カ月で10刷4万部に達した『民主主義とは何か』の著者で東京大学社会科学研究所教授の宇野重規氏へのインタビューを前後編にわたってお届けする。

私が「デモクラシー」という言葉を使わない理由

――宇野さんは、これまで『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書)や『民主主義のつくり方』(筑摩選書)など、デモクラシーや民主主義をテーマにした著書をお書きになっています。これらの著書が現代の民主主義を考察の対象にしているのに対して、新しく書かれた『民主主義とは何か』(講談社現代新書)は、古代ギリシャまでさかのぼって、民主主義の歴史をたどる内容になっています。今回の『民主主義とは何か』は、宇野さんがこれまで書かれた民主主義論のなかで、どのように位置づけられるのでしょうか。

私はあまり計画的にものを書く人間ではないので、長期的な構想にもとづいて本を書いているわけではないんですが、以前に書いた『〈私〉時代のデモクラシー』と『民主主義のつくり方』とは、1つ大きな違いがあるんですね。それは「デモクラシー」という言葉を使わず、「民主主義」と言っていることです。

政治思想史を専門とする私の研究は、19世紀前半のフランスの政治思想家であるアレクシ・ド・トクヴィルが書いた『アメリカのデモクラシー』という本から出発しました。この本を読むと、トクヴィルがデモクラシーという言葉にさまざまな意味を込めていることがわかります。狭い意味での政治体制という意味もあれば、社会が平等化していく歴史の趨勢を指す場合もある。あるいは、対等な人間関係のあり方みたいなものも含んでいる。

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