リモートで多発する社員間の「下品なやり合い」 みんながどんどん不機嫌になっていく
さまざまな企業からの依頼で職場文化の改善を手がけているグスタボ・ラゼッティは、昨年にコロナ禍となってから、企業にある変化が起きていることに気がついた。従業員の間で政治に関する言い争いが増え、部下をコントロールできなくなった管理職も増加。細かなことにまで異常なほど首を突っ込んでくるくせに、相手への思いやりが消えるという妙な光景が広がるようになったというのである。
「従業員はカメラをオフにし、アバターの背後に隠れ、ますます無礼な態度を取るようになってきている」とコンサルティング会社「フィアレス・カルチャー」を経営するラゼッティは言う。「互いがどんどんと攻撃的になっている」。
職場の会話が「無秩序」に
中には、職場での会話がネット上の会話と同じくらい無秩序なものとなってしまった会社もある。なぜなら、職場での会話は今やネット上で交わされるようになっているからだ。
多くの会社がリモートワークに移行して1年近くが経過し、リモートは2021年になってからもまだまだ続く。ツイッターに投稿するとき人は普段よりも大胆になり、辛辣なコメントを投稿しがちとなるが、これと同じことが「マイクロソフト・チームズ」や「スラック」といったビジネス用のメッセージツールでも起きている。いいことも悪いことも、ずけずけと書き込む従業員。しかし、それによって訴訟リスクは高まった。
「コロナ禍が始まった頃、リモートワークを始めた人々は誰もがこう言って、自分たちの取り組みを自分たちで褒めていた。『見よ、生産性は落ちなかったではないか。われわれはデジタルへの移行を成し遂げたのだ。プロセスの効率化、業務のデジタル化、意思決定の分散化など、やろうとしていたことはすべて実現できた』。ところが、彼らは職場の文化というものを忘れていた」こう指摘するのは、ケンブリッジ大学の教授で、組織に関する研究を手がけているジェニファー・ハワード=グレンヴィルだ。「その(痛々しい)現実がついに姿を現すようになった」というわけである。