海外紙記者が見た東京「外出自粛」ヤバい実態 アメリカの友人から心配の声も上がっている

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外出自粛要請後も、パチンコ店などには人の姿が(撮影は4月17日、写真:Noriko Hayashi/The New York Times)

それはごく普通の光景だった。男女が店でお酒を飲むという、ニューヨーク、ロンドン、サンフランシスコの人々にとっては思い出の中でしかできないことだ。

東京は緊急事態宣言が発出されてからすでに1週間以上が経っていた。しかし都心の繁華街、六本木にあるレストランの小さな窓越しに、彼らがジョッキでビールを飲みながら、密接して会話する様子が見えた。ほかの客もマスクをあごにずらし、キッチンから運ばれてくるたこ焼きを待っていた。

「新型コロナウイルスは夜行性」という冗談も

誰も法律を犯してはいなかった。緊急事態宣言は、各都道府県の知事に外出自粛や休業を要請する権限を与えたにすぎない。東京都知事は人々に夜間の外出を控えるよう呼びかけたが、レストランやバーは夜8時までの営業が許可されたことから、「新型コロナウイルスは夜行性だ」という変な冗談も生まれた。

東京では人々はたいていルールに従う。道を渡るときは青信号になるまで待つし、地下鉄の駅のエスカレーターでは1列に並ぶ。

しかし、それはいつ崩壊してもおかしくない。私が通勤時にいつも通る路地は、「禁煙」のサインがあるにもかかわらずつねにスモーカーたちで溢れている。東京の騒がしい(そして酒浸りの)ナイトライフは働く人々に、上下関係の厳しい日本の職場から逃避する機会を与えてくれている。致命的なウイルスの脅威があったとしても、人々はこのような息抜きの場を簡単には手放そうとしない。

ある程度のソーシャルディスタンシング(社会的距離)は日本の文化に組み込まれている。日本人は握手の代わりにお辞儀をする。ハグなどは滅多にしない。また欧米諸国ではマスク着用の必要性が議論になったが、日本人にとってマスクをするのは当たり前だ。コロナウイルスの感染が広がるずっと前ですら、特にインフルエンザが流行する冬には、電車の乗客という乗客の顔は白いマスクで覆われていた。

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