メンズ美容の中でも受け入れられやすいのが、身だしなみの一環としての美容だ。特に身近なアイテムは唇の乾燥や色を補正するリップケア製品で、一般的な薬用リップバームだけでなく、最近はより進化したメンズ向けアイテムも登場している。
メンズ美容のインフルエンサー宮永えいと氏は美容師として働く傍ら、YouTubeで12万以上の登録者を持ち、身だしなみとしての美容情報を発信している。1月にはメンズコスメブランド「RETOUCH(レタッチ)」を自己資金で立ち上げ、大きな話題となった。
ブランド立ち上げは2年前から構想していたという。「その頃にはメンズ向けブランドが少しずつ登場していたが、美容文脈で発信するブランドが多く、機能性を重視した商品が多かった。しかし男性にとって『美容』は遠い存在。ファッションや身だしなみの延長線として発信するほうが、男性に馴染みやすいと考えた」(宮永氏)。
美容師として男性客に接する際も、クセ毛などの悩みを解消するための機能性を求める客もいれば、ファッション性を重視する客も多かったという。
リップクリームを塗るときに抵抗感がある
第1弾として発売したのはBBクリームとリップクリーム。ベイプやUSBなどのガジェットから着想を得た“ギアっぽい”スタイリッシュな見た目のアイテムだ。
「アンケートを取る中でいくつか課題があった。1つは普通のアイテムではテンションが上がらず(リップを)失くしてしまうこと。これはデザインで解決しようと考えた。もう1つは『乾燥は気になるが、リップクリームを塗るときに人の目が気になる』ということだった」と宮永氏。
人目が気になる、というのはリップケアに関することだけではない。鏡を見ることは女性らしい、男性が鏡を見ているのはナルシストだというジェンダーバイアスを持つ人は多く、鏡を見ることに抵抗感を覚える男性は多い。そのため多くの男性が、自分の顔を鏡でしっかり見ていないと宮永氏は指摘する。
「身だしなみはマイナスをゼロにすることだと考えるが、そもそも自分の状態を知らない人が多すぎる。そこでブランドのコンセプトを“身だしなみのアップデート”とし、まず自分の状態を知ってもらうこと、そこからゼロの基準を上げることを目標としている」。
「RETOUCH」のリップバームは無香料無着色、ナチュラルなツヤで、つけているのはわかりにくいが潤った唇にケアする商品だ。一方で、バレないながらも色を施すメイクアップに近いメンズ向けアイテムも他社から登場している。
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