国内MBAの光と影--不況で志願者が増えるが、質低下の懸念も
1990年代から2000年代前半、欧米の大学院への留学でブーム化した経営学修士MBA。今、その人気が再燃している。
しかし、かつてのような企業派遣の留学が盛んなわけではない。熱い視線を浴びるのは、国内で働きながら平日の夜間と週末に大学院に通う「パートタイムMBA」だ。
「リーマンショック以降、問い合わせが急増している」。国内MBA受験専門予備校、ウィンドミル・エデュケイションズの飯野一CEOはそう語る。実際、国内の経営系大学院は「夜間のニーズが増えている」と口をそろえる。「企業が中途採用を絞り込む中、会社を辞めるリスクは取りづらい。それでも何とかキャリアアップして生き残りたいと考える30代が増えている」(飯野氏)。
だが、志願者数の増加傾向を手放しで喜ぶことはできない。MBAマーケットでは、質低下が懸念され始めてい
るのだ。
専門職大学院が増加 強まる供給過剰感
現在、国内で「MBA」と称される学位は大きく二分される。一つは従来の研究者養成型の大学院で取得する経営学修士。もう一つは新たに設置された「専門職大学院」で取得できる学位だ。
文部科学省は03年、大学院設置基準を改定し、経営、法曹、教職などの分野でプロフェッショナルな人材育成を狙った専門職大学院を制度化。経営系なら修士論文の作成を不要とし、実務家教員を一定の割合で配置させるなど、従来の修士課程とは異なる特徴を打ち出した。
制度導入から7年間で、経営系の専門職大学院は全国で30大学院32専攻が開講した(技術経営修士のMOTを含む)。その多くが平日夜や週末に学ぶコースである。間口が広がったことから、少子化で学生数の確保に悩む多くの大学が名乗りを上げた。
その結果、供給過剰感が強まっている。早稲田大学ビジネススクールの遠藤功教授は「企業派遣が昼間から夜に移行しているが、それでも夜間のコースは多すぎる」と指摘する。