LGBT集結、「LAプライド祭」に行ってみた 同性愛者へのフレンドリー度を競うキリスト教会

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同教会のブースで勧誘していたロン・ビーチャードさんは元々バプティスト派で育ったが、この教会のメンバーになって12年だ。

「うちの教会では同性カップルが堂々と手をつないだり、キスしたりできる。普通のキリスト教会ではそれは難しい。うちではどこでも受け入れてもらえなかったと感じている人を勧誘したいんです」

この教会の創始者は自身がゲイだったトロイ・ペリーだ。1968年に自宅で始めた教会だった。彼はこのLAプライド祭の創設者のひとりでもある。

1969年、ニューヨーク市内のクリストファー・ストリートでゲイの人権を求める運動が起こったのを機に、70年、ペリー氏を含め、LAの地元有志がゲイ・パレードを開こうと警察署長にパレードの開催許可を求めたのがこの祭典の始まりだ。当時の警察署長は「ホモセクシュアルにハリウッドでのパレード許可を与えるのは、泥棒や強盗に許可を与えるのと同じだ。暴動になる」と答え、許可を与えるかわりに、巨額のパレード費用と警察の人件費を払うことを要求したが、結果的に州裁判所がパレードの許可を下し、同時に警察の協力も命令して、初回の祭が実現したという経緯だ。

説教の様子をストリーミングで実況

LAプライド祭の次の日曜日、実際にこの同性愛者に特化しているというメトロポリタン・コミュニティ教会の日曜礼拝に行ってみた。自身がゲイである牧師のニール・トーマス氏のその日の説教のタイトルは「独身生活とセックス」。さすがにカトリック教会では聞けないようなお題だ。自身の過去の経験を交え、ゲイ男性のセクシャリティーと神への信仰との関わりを語っていた。

ざっと見回したところ、参加者はゲイ男性のカップルが7割だが、女性同士のカップルやお年寄りもかなりおり、さまざまな人種、年齢のひとびとが集まる礼拝は、そのままストリーミング実況されていた。

礼拝の最後に、女性のメンバーが真ん中に立ち、牧師が「彼女は今日から彼として生きていきます」と全員の前で「性転換」を発表した。トランスジェンダーのそのメンバーへは、全員からサポートを込めて大きな歓声が飛んだ。

LAプライド祭の現場から見ても、LGBTコミュニティとキリスト教会の関係は確実に時代と共に変化しており、受容の度合いの違いはあれど、ほとんど全てのキリスト教宗派がLGBTコミュニティに今まで以上に積極的にアプローチしようとしていることは間違いない。

長野 美穂 ジャーナリスト

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ながの みほ / Miho Nagano

米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙記者として5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社に勤務した経験もある。

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