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ビジネス #楠木教授の好き嫌い対談

引退後に戸惑った、社会の「あいまいさ」 為末大 元プロ陸上選手の好き嫌い(中)

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  • 楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授
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社会の「あいまいさ」に戸惑う

楠木:要するに、競技を観る人に、精神の高揚を与える。その意味では、テレビに出ている芸能人よりもより芸術的。仕事としての提供価値が言葉のそもそもの意味で芸術に近い。映画の『炎のランナー』が描いている世界ですね。
先ほど、表現の喜びがあるとお聞きしたところで、アーティストに近いと言いましたが、仕事として成立させるという部分でも芸術家に近いですね。古くは、ヨーロッパ中世のメディチ家のようなパトロンの援助や資金が、作品の成立に欠かせないといったようなところが。

前向きに「諦める」ことから、自分らしい人生が開けてくる――。ネット上で炎上騒ぎを巻き起こした「走る哲学者」の最新作。

為末:かなり近いです。まさに芸事ですね。今は、ツイッターとかフェイスブックとかソーシャルメディアがあって、たとえば、自分のフォロワーが何人いるとかが、すぐにわかりますので、昔よりもスポンサーに直接アピールしやすい環境にあると思います。

楠木:メディアでの露出が経済的な価値を持つ時代ですからね。テレビなどに出演するためにも、やっぱり、競技で何らかのインパクトを与える必要があるわけですね。

為末:野球やサッカーのように、リーグがないスポーツのプロというのは、「芸能人モデル」で仕事をしていくパターンが多いです。

楠木:でも、そうした芸能人モデルも長続きはしませんよね。現役時代は成功しても、引退後はどうなるのですか?

為末:その部分で悩んでいるというか、困っている人が多いのです。それもあって、アスリートのセカンドキャリアを支援する仕事をしています。特に陸上選手は、引退後、社会不適合となる人が多いです。

楠木:それは、ずっとルールが厳格な競技をやって来たからですか?

為末:そう言えると思います。自分たちがやってきたことと違って、なんて社会はあいまいなのだろう、という戸惑いがありますね。そういう意味で、陸上選手は、清廉潔白で弱い人が多い。私自身も1年くらいかかりました。それに比べて、サッカーやラグビーといった集団のスポーツをやっていたアスリートは、社会に適合している人が多い。きっと、審判に気づかれずにファールするのも技術のうち、という要素があるのが大きな違いだと思います(笑)。

楠木:確かにそうですね。ラクビーをやっていて、経営者として業績を上げている人って、けっこういますね。

(構成:松岡賢治、撮影:梅谷秀司)

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【会場】東京交通会館12階 カトレアサロンB 千代田区有楽町2-10-1
【お問合せ】三省堂書店有楽町店1階、電話03-5222-1200
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