あのビル・ゲイツが「トイレ革命」に挑戦する訳 2億ドルを投じて新しい汚水処理装置を開発
この件について、グローバルな衛生の解決に取り組むコーポレート・レスポンシビリティ室 室長の長島洋子さんに話を聞いた。
「開発途上国の農村地域などで、安全で衛生的なトイレがないため屋外で排泄している人がたくさんいることはご存知でしょうか。その結果、水源が汚染され、下痢性疾患により毎日約800人の子どもが命を落としていると言われています。女子児童や女性たちは用を足しに行く途中で暴力や嫌がらせの被害にさらされているのです。適切な衛生環境のない学校では、特に生理期間中の女子生徒への影響が大きく、多くの女児が中退を余儀なくされています」
開発途上国には、トイレ環境がないために教育を受けられなくなる子どもまでいるのだ。日本で暮らしていると考えも及ばない現実である。
水洗トイレは、日本では当たり前になっている。しかし世界を見渡すと、下水道の整備や改修ができない地域、敷設が現実的ではない地域は多い。そこでSATO事業がスタートした。
虫による病原菌の媒介と悪臭防ぐ
SATOの便器は、排泄量にもよるが、約0.2~1リットルの水で洗浄できる。カウンターウエイト式、つまり、排泄物と水の重さで弁が開き、動力を使わずに閉まる方式だ。ハエをはじめとする虫による病原菌の媒介と悪臭を防ぐ。
「ゲイツ財団ではトイレ再開発チャレンジをテーマに、さまざまなトイレプロジェクトを支援しています。簡易式トイレシステムSATOの初代モデルは、バングラデシュでの住民へのヒアリングのもとゲイツ財団の助成を受けて開発され、2013年から販売を始めました。二度目の助成ではSATOの3つの新型モデルのフィールドテストをザンビア、ケニア、ウガンダ、およびルワンダで実施しました。2016年には三度目の資金助成を受け、グローバル展開をさらに加速させています」
ビル・ゲイツがReinvented Toiletの試作モデルを発表した2018年には、LIXILはゲイツ財団から三度の助成を受け、すでに信頼関係が構築されていた。