あのビル・ゲイツが「トイレ革命」に挑戦する訳 2億ドルを投じて新しい汚水処理装置を開発

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現在、アフリカのタンザニア、エチオピア、ナイジェリアをはじめ、アジアのインド、ネパール、バングラデシュや、さらに中南米のペルーやハイチなど38カ国1860万人以上の人がSATOのトイレシステムを利用している。

「最初に進出したバングラデシュでは、2019年に事業としても黒字化を達成することができました。収益を上げる持続可能な事業でありながら、社会に貢献できることを実証できたのです。ただ、国や地域によって事情はさまざまで、衛生面における意識にも違いがあります。清潔なトイレがなぜ必要なのかを理解してもらわなくてはいけません。

そのために、多くの現地のパートナー企業や国際機関と協力して活動を進めています。地域の人たちに安全で清潔なトイレの利用を呼びかけ、衛生に関する学習プログラムの実施など、トイレの設置を増やす活動を展開しているパートナーは、ソーシャルビジネスであるSATOにとって重要な役割を担っています」

トイレをつくるだけではなく、現地の人たちの衛生面での意識を高めるための活動が必要だというのだ。

「ビジネス」としても成立させる必要がある

そして、社会貢献としてだけでなく、ビジネスとしても成立させなくてはならない。そうでなければ、それぞれの国や地域では持続しない。根付かない。そのために、SATOの各国にいる約40人のスタッフは地域の人たちとのコミュニケーションをはかり、現地に根差した活動になるように働きかけている。

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「水まわりや住宅建材のメーカーであるからこそ、LIXILはその専門知識や規模を活用して、2025年までに1億人の衛生環境を改善することを目標にしています。SATOはトイレの普及活動に加えて、手洗いソリューションも始めました。2020年、新型コロナウイルスが世界中で感染拡大するなか、手洗いの重要性が再認識されています。

しかし、トイレ同様、世界人口の40%が家庭で手洗いの設備を利用できない状況にあります。このような環境で暮らす人が、後発開発途上国では人口の75%にも上ります。水道や水や石鹸が使えていないのです。こういった地域の多くはSATOのトイレシステムが進出している地域でもあります。そこで、上下水道が十分に整備されていない地域向けに、少量の水でも使うことのできるSATO Tapという手洗い器も開発しました」

後発開発途上国の人々を救うべくトイレの開発は、今さまざまに展開され、世界に広がっている。

(文:神舘和典、西川清史)

神舘 和典 ジャーナリスト

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こうだて かずのり / Kazunori Koudate

1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。『墓と葬式の見積りをとってみた』『ジャズの鉄板50枚+α』『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』など著書多数。

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西川 清史 文藝春秋前副社長・編集者

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にしかわ きよし / Kiyoshi Nishikawa

1952(昭和27)年生まれ。和歌山県出身。上智大学外国語学部仏語学科卒業後、77年文藝春秋入社。「週刊文春」「Number」編集部を経て「CREA」「TITLe」編集長に。2018年副社長で退職。

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