中国独自の国産CPU(中央演算処理装置)「龍芯」の開発を手がける龍芯中科技術は、このほど上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」への上場準備に入った。
2020年12月28日に中国証券監督管理委員会北京監督管理局が開示した情報から、同社が証券大手の中信証券と上場コンサルティング契約を締結したことが明らかになった。もし順調に実現すれば、龍芯中科技術は国産CPUメーカーとして初の上場企業となる。
龍芯は中国で最も早く研究開発がスタートした国産CPUの1つで、そのプロジェクトは2001年に中国科学院計算技術研究所で始まった。2010年には中国科学院と北京市政府が共同で龍芯中科技術を設立し、ビジネスベースでの龍芯の普及を目指してきた。
中国では通信機器大手の中興通訊(ZTE)や華為技術(ファーウェイ)に対するアメリカ政府の制裁がきっかけとなり、官公庁を中心に外国企業製のIT機器やソフトウェアを国産品に置き換える「国産代替」が推進されている。龍芯はその潮流をつかみ、2019年の出荷量は50万個、売上高は2018年の2.2倍に増加した。
MIPSアーキテクチャー採用で普及に壁
現在、世界のCPU市場ではアメリカのインテルの「x86」とイギリスのアームの「ARM」という2つのアーキテクチャーが主流を占めている。そんななか、龍芯はそれらと異なる「MIPS」アーキテクチャーを採用し、独自のエコシステムを作り上げている。
MIPSアーキテクチャーは、1981年にアメリカのスタンフォード大学のチームが開発し、2000年前後にはサーバーなど企業向けの高性能コンピューターのCPUに多数採用されていた。そして当時の世界の主流に乗るべく、龍芯の開発チームはMIPSを選択した。
ところが2010年以降になると、パソコンとサーバーの領域ではx86が、モバイル機器の領域ではARMがそれぞれ圧倒的な地位を確立した。MIPSの開発を続けているのは世界的に見ても龍芯など少数の企業に限られており、安定した事業基盤を維持するのは容易でないのが実態だ。
とはいえ、龍芯は少数派であるものの、中国市場で比較的長期間の検証を経てきた。このためセキュリティーや信頼性が高いとの評価を得ており、中国の官公庁や軍関係向けの市場では一定の優位性を備えている。
もちろん、それだけでは市場規模が限られている。国産代替の潮流をテコにより大きな市場を獲得することができるか、龍芯にとって非常に難しいチャレンジと言えそうだ。
(財新記者:叶展旗)
※原文の配信は2020年12月31日
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