中国の新興電気自動車(EV)メーカーの拜騰汽車(バイトン)は1月4日、電子機器の受託製造サービス(EMS)大手の富士康科技集団(フォックスコン)と戦略提携の枠組み契約を結んだと発表した。フォックスコンは台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の中核子会社である。
2016年に発足したバイトンは、当初はSUVタイプのEV「M-Byte」の量産を2019年末までに始める計画だった。しかし資金調達が思惑どおり進まずに経営難に陥り、2020年6月に中国での事業活動を6カ月間停止すると発表。その後、バイトン創業時に中心的役割を果たした外国籍の経営メンバーは全員退職した。
1月4日の発表によれば、フォックスコンは戦略提携に基づいてM-Byteを量産するための生産技術、品質管理、部品のサプライチェーンなどのノウハウとリソースをバイトンに提供。2022年3月末までの量産開始を目指しているという。
バイトンに近い関係者によれば、フォックスコンはバイトンに対して2億ドル(約206億円)の資金提供を計画している。これについてフォックスコンは、財新記者の問い合わせに「公式発表していない件にはコメントできない」と回答した。
EV開発のオープン・プラットフォーム提供
フォックスコンの立場では、今回の提携は実質的なバイトン救済であると同時に、事業多角化の新たな布石と言える。「EMSの巨人」と呼ばれる親会社のホンハイは、近年、EV関連事業の新規開拓に力を入れてきた。
例えば2020年1月、ホンハイは自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とEVの合弁会社設立に向けて交渉していることを明らかにした。さらに同年10月、ホンハイはEVの車両開発に多数の企業がオープンに参画できるプラットフォームを提供すると発表。EV事業への本格参入を宣言した。
一方、中国のEV市場では先行メーカー間の競争が激しさを増している。アメリカのテスラは、上海工場で現地生産したEVのデリバリーを2020年1月に開始。蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車など中国の新興メーカーも、すでに複数モデルのEVを投入した。上海汽車集団などの(ガソリン車の)大手自動車メーカーも、EV専用の新ブランドを次々に立ち上げている。
仮にバイトンがM-Byteの量産にこぎつけても、市場にはすでに競合車がひしめいている状況だ。自動車業界のある専門家は、「2022年にM-Byteを発売しても競争力を発揮するのは難しい」との厳しい見方を示した。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は1月5日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら