2021年の新成人は124万人。「子ども」から「大人」へ一歩踏み出す成人の日、親の離婚を経験した子どもは、何を感じ、何を考えているのだろうか。
厚生労働省の統計によれば、2018年の1年間に親の離婚を経験した未成年子の数は約21万人に上り1960年に比べて、およそ3倍もの数字となっている。子どもの頃、親の離婚を経験した彼らは大人になった今、どのような思いでいるのか、彼らの声に耳を傾けてみたい。つい最近まで「子ども」だった20代前半の若者2人に話を聞いてみた。
家庭から欠けた「父」というピース
酒井千春さん(仮名、20歳)は、都内の大学2年生。東京郊外の戸建てに、祖父母と母、兄と暮らしている。コロナ禍での大学生活は思い描いていたものと違ったが、制約があるなかでも、あれもこれも経験したいと向学心に燃える少女だ。千春さんの父親は、彼女が小学5年生のときに突然、家を出ていった。
「ある日学校から帰ったら、父の荷物が全部なくなっていて、びっくりしました」
千春さんの家は、母方の祖父が興した会社を家族で経営しており、父親はそこに入社していた。元は別世帯だったが、リーマンショックで経営が厳しくなったころから、祖父母の家に同居を始めた。ずっと仲のいい家族だったが、同居を始めてから少しずつ家庭内の空気が悪くなってきた、と千春さんは感じている。父親が出ていく数カ月前から、父は2階の部屋にこもりっきりで、リビングに降りてくることがなくなった。
「私は子どもだったから、よくわからなかったけど、もしかしたら父は祖父母との生活が窮屈で、不満がたまっていたのかもしれませんね」
祖父母の家は裕福で、母親は一度も働いたことがない箱入り娘。千春さんも、4つ年上の兄も小学校から私立に通っている。
「公立小学校に通っている子を見下すみたいなところのある家だったから、おおらかな父とは感性が合わなかったのかも……」
父親が出ていったことについて、子どもたちには何の説明もなかった。家庭から「父」というピースが欠けただけで、資産があるからか経済的に困ることもなく、生活はほとんど変わらなかった。
「父が出て行ってから1カ月後くらいに、兄の携帯に『駅前のカフェに何日の何時』ってメールが入って、兄と2人でチャリに乗ってそこへ行きました。何を話したかほとんど記憶にないけれど、帰り際に私が『もう会えないの?』って聞いたら、『千春には、お母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、お兄ちゃんもいるから大丈夫だよ』って言われて、それって会えないってことなんだと思って、悲しくて大号泣したことだけはよく覚えています」
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