新型コロナウイルスは、家族関係にも大きな影響を及ぼしているようだ。外出自粛で家族が顔をつき合わせることが増え、それまで外で息を抜くことで保っていた関係が一気に煮詰まり、家族トラブルが深刻化。当初は、それこそ「コロナ離婚」が増えるのではないかと懸念された。
ただ実際には、離婚件数はむしろ減っている。厚生労働省の調査によれば、今年1〜6月に離婚した夫婦は10万122組で、昨年同期比で1万923組少なかった。これについては、コロナ禍により夫婦の絆が強まったわけではなく、家裁調停が停止するなど社会全体が活動を自粛しているため、決断を先延ばしにしている夫婦が多いからだという見方もある。
親子関係にも影響するコロナ禍
いま目に見えて進行しているのは、親子関係の「コロナ断絶」だ。別居・離婚後の親子がなかなか会えない。家裁での面会交流調停が滞っているほか、コロナを理由に面会交流が実施されないケースは多い。
首都圏在住の小西貴之さん(仮名、50歳)は、1年半前に離婚。元妻は、当時10歳と8歳の子どもを引き取り、四国の実家に連れて帰った。そこには高齢の両親がいる。
「人生観の違いから、互いに納得して別れました。養育費は1人月3万円ずつ、面会交流は好きなときにいつでもと、2人で話し合って決めました」
どちらが悪いというわけではない、性格の不一致による離婚。小西さんは心機一転、それまで住んでいた東海地方から首都圏に引っ越し、仕事も変えた。子どもが暮らす四国とは遠く離れているので、しょっちゅう会うことはできないが、その分、会ったときには思いきり交流を深めようと思った。
それなのに。コロナ以降、小西さんは子どもにまったく会えていない。
「4月、まだ緊急事態宣言が発令される前のこと。休みが取れたので、久しぶりに子どもたちに会いに行こうと思い、元妻に連絡したんです。そうしたら『父親が来るなと言っているので、やめてくれ』と。元妻の父親には糖尿の持病があるので、万が一にでも私から子どもを通じて感染したら困る、というわけです。もう航空券も取ってしまっていたので、相当頭にきましたが、そのときは泣く泣く諦めました」
子どもたちとは、週1回ほどスカイプを通じて交流していた。しかし、生身の交流とは違う。膝に乗せたり、プロレスごっこをしたりは、オンラインではできない。子どもたちに会いたい! 緊急事態宣言も解除された7月、小西さんは再び元妻に連絡をとった。
「そろそろ会いに行こうと思うんだけど」
元妻の返事は、「NO!」だった。
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