「けんか別れした彼女から、別れて4カ月後に突然『話がある』とメールがありました。あなたの親に話がしたいとのことだったため、母に彼女の話を聞いてもらい、母を介して妊娠を知らされました。すでに7カ月。彼女は、私が育てようと考えている、と」
多くの男性なら、ここは共感し妥協するところなのかもしれない。「本当に俺の子なのか?」と、疑うところから始める男性がいてもおかしくない状況だ。しかし、安藤一浩さん(47歳)は、こう即答した。
「授かった命を大事に、僕が育てたいです」
これからの人生は子どもに命を注ぐ
当時、一浩さんは40歳にもうすぐなるところ。件の彼女と付き合う前に婚姻歴があり、その結婚は相手の精神的な課題が原因で、相手の親に、親元に連れ戻される形で別れさせられた。
「精神障害を抱えている人で、僕が仕事のためにそばを離れることすら苦痛になるという状態でした」
離婚し、1年後彼女と付き合い始めた。結婚前より古くからの音楽仲間で、いつも黒色の服を着ている、6歳年下のちょっと風変わりな女の子。離婚後再会し音楽仲間を超え、人生観を話し合ううち男女の関係になった。
結婚することになり、同棲する予定で部屋を借りた。借りた部屋に入居する直前、彼女は人が変わったかのように、突然意見を覆し、彼女から別れを告げられたという経緯がある。
前の結婚では子どもができなかった。妻がいて、子どもがいる幸せな家庭像を一浩さんは描き、夢を抱いていた。再び結婚し子が授かるといいな、そう思っていたが彼女と別れることで夢は現実にならないと諦めた矢先の妊娠の知らせ。驚きよりもむしろうれしさが勝ったと、一浩さんは言う。
一浩さんとしては、一方的に別れを告げられただけで、嫌いで別れたわけではない。だから、子どものことを優先的に考え、子どもには父母がともに必要だから、復縁を呼びかけた。彼女は拒み「私は育てられないので、あなたが育ててください」と言った。それならば仕方がない。自分自身で何としても生まれて来る子どもを育てよう。一浩さんは親になる覚悟を固めた。
「そのとき決心しましたね。自分のこれからの人生は子どもに命を注ごう、と。子ども最優先、仕事は最小限にして、自分の好きなことや趣味も捨てて、子どものために生きていく選択を僕はしました」
こうもすんなり父性が湧いてきた一浩さんが不思議だ。ふっくらした丸顔で不思議な安心感がある一浩さんは、昔から、ちょっと変わっている女の子に好かれてきた。もともと、弱い者を守りたくなる気質の持ち主なのだろうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら