(第9回)円高犬は吠えなかった、それこそが重要だった

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 円とドルの名目為替レートは、2000年頃から07年夏まで、1ドル110円程度を中心として変動しており、傾向的な趨勢は見られない(下図)。

ところがこれは、白銀号事件で犬が吠えなかったほどおかしなことなのである。本来なら、傾向的なドル安・円高が生じていなければならなかったのだ。その理由を以下に説明しよう。

日本車がアメリカで売れた理由

1990年代以降、日本とアメリカの物価上昇率には、差があった。大まかにいえば、日本の物価がほとんど上昇しなかった半面で、アメリカでは年率3%程度の物価上昇が続いた。この状況で名目為替レートが不変だと何が起こるかを、次のような簡単な仮想数値例を用いて考えてみよう。

性能がまったく同じ車が、トヨタ車は200万円、GM車は2万ドルであったとする。為替レートが1ドル=100円であれば、価格面でも同じだ(輸送費や関税などを無視する)。

1年後、トヨタ車は200万円のままだ。ところが、アメリカでは物価上昇があるので、GM車は2・06万ドルになる。このとき為替レートが1ドル=100円のままだと、アメリカに輸入されたトヨタ車は、依然2万ドルだ。だからアメリカ人はトヨタ車を買うだろう。

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