生活苦で「愛猫の餓死を考えた」飼い主の危うさ 「2匹はそのまま死なすしかないと思っていた」

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Aさんのケースでわかるように、1人暮らしの飼い主が考えておかなければならないのは、自分に万が一のことがあったときのことで、さまざまな事態を想定して備えておく必要があります。

ケガや病気など短期間であれば、何とか対応ができますが、それが長期間、永久にということになれば、備えなしに対応できません。友人・知人、あるいは力になってくれそうな人に相談して、ペットのことを頼んでおくことも必要です。

Aさんには身寄りがありませんでしたが、「私は家族がいるから大丈夫」と安心するのもいけません。家族がいたとしても、ペットの世話をしてくれるとは限らないからです。ペットを飼える環境ではないなど、さまざまな事情で断られることも多く、事前に意思の確認をしておくことが大切でしょう。

そのほかにも、いざというときに施設に預けられるようペットのための貯蓄をしたり、かかりつけの獣医師やトリミングサロンのトリマーなどにも相談しておくと安心です。また、施設等の情報を収集したり、里親募集の方法を事前に調べておくことも必要でしょう。

そして、万が一のときは意思の疎通ができるとは限りません。自分の希望等を手帳やノートにまとめて持ち歩く、あるいは自宅のわかりやすい場所に置いておくことも大切なポイントです。すべては「備えあれば憂いなし」です。

あきらめなければ「ペットの命」はつなげられる

最後に今回のケースで考えなければならないことは、「飼い主が困窮したからといって、ペットの命を奪う選択をしてよいものか」ということです。

確かにAさんのように八方塞がりになれば、投げやりになることもあります。それでも、「ペットの命をつなぐ」ことをあきらめないでほしいのです。飼い主があきらめなければ、その思いは誰かに伝わり、命がつながる可能性は確実に高まります。

万が一のことは、誰にでも起こりえます。飼い主の責任ある選択とは、共に過ごしてきたペットがその後も幸せな日々を送れるように、新しい居場所を見つける努力を最大限することではないでしょうか。

阪根 美果 ペットジャーナリスト

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さかね みか / Mika Sakane

世界最大の猫種である「メインクーン」のトップブリーダーでもあり、犬・猫などに関する幅広い知識を持つ。家庭動物管理士・ペット災害危機管理士・動物介護士・動物介護ホーム施設責任者・Pet Saver(ペットの救急隊員)。ペットシッターや保護活動にも長く携わっている。ペット専門サイト「ペトハピ」でペットの「終活」をいち早く紹介。豪華客船「飛鳥」や「ぱしふぃっくびいなす」の乗組員を務めた経験を生かし、大型客船の魅力を紹介する「クルーズライター」としての顔も持つ。

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