生活苦で「愛猫の餓死を考えた」飼い主の危うさ 「2匹はそのまま死なすしかないと思っていた」
やっと保護ができると思った矢先、事態は思わぬ方向に進みました。タロウ君が窓の網戸を破って、隣の部屋のベランダへ行ってしまったのです。いくら呼んでもタロウ君は戻ってきません。運が悪いことに隣は空き部屋。しかも5階で、簡単に行くことはできません。
保護するためには、Aさんから管理会社に連絡をしてもらい、鍵を開けてもらう必要がありました。しかし、この集合住宅はペット不可の物件で、「猫を保護するので、隣の部屋を開けてほしい」とはすぐに言えない事情があったのです。
保護できたと連絡がきたのは、それから数週間後でした。私はすぐに介護支援相談員の事務所に向かい、タロウ君とジロウ君と再会しました。
衰弱状態になったタロウ君
早速、車に乗せ、キャリーバックに入った2匹を確認すると、タロウ君の様子がおかしいことに気がつきました。
まだ車も動いていないのにゆらゆらと体が揺れています。名前を呼んでも目が虚ろで、反応が鈍いのです。よだれも出ています。私はすぐに車を走らせ、動物病院へ向かいました。もう1匹のジロウ君は、軽い脱水症状があったものの、健康に大きな問題はありませんでした。そのため事前に相談をしていた施設に預けて、里親を探してもらうことにしました。
残念ながらタロウ君は、衰弱が激しく、脱水症状・腎機能低下・黄疸・貧血という診断で、そのまま入院することになりました。
数カ月にわたる飼い主不在の過酷な生活が、タロウ君の健康を害したようです。命の危険もありましたが、少しずつ回復。退院して私の家で様子を見ることになりました。1カ月半後、ボロボロだったタロウ君は元気を里親を探せる状態にまで回復。「本当によかった」と安堵したのでした。
さて、Aさんがタロウ君とジロウ君のことを「そのまま、ほっといてくれ」と言った背景には、どんな事情があったのでしょうか。
今まで共に暮らし、かわいがってきたであろう2匹を「餓死」させる選択をするには、よほどの困窮があったのだと思います。介護支援相談員から詳しい話を聞くうちに、いくつかの事情が見えてきました。
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