生活苦で「愛猫の餓死を考えた」飼い主の危うさ 「2匹はそのまま死なすしかないと思っていた」
筆者も猫を飼っているので、週に1度の世話ではどのような状態になるのか想像ができました。また、「そのまま、ほっといてくれ」と言い続けるAさんの心情も気になり、猫たちの様子や飼育環境などを確かめることにしました。
相談を受けた数日後、介護支援相談員と共にAさんの自宅を訪ねました。玄関を開けると猫の糞尿のニオイが漂ってきましたが、猫たちの姿はすぐには確認できませんでした。玄関横の部屋の床の上には鍋やお皿に入ったフードと水が置かれていました。
同じ部屋に設置された2つのトイレには1週間分の糞尿がたまり、何匹ものハエが飛び回っていました。2DKの間取りには荷物が所狭しと置かれており、整理整頓もされていません。
猫たちはその荷物のあちらこちらでも糞尿をしているようで、どの場所に立ってもニオイを感じました。Aさんが入院してから清掃されることもなく、数カ月間が過ぎているため、衛生状態はかなり悪いと感じました。
猫の名前はタロウ君とジロウ君。名前を呼びながら2匹を探しましたが、物音ひとつしません。しばらく探し回ると、タロウ君はベッドの下から、ジロウ君はベッドの上の布団のわずかな隙間から、じっとこちらを伺っていました。しかし、それ以上は近づこうとはしません。むしろ近づくと逃げようとします。
2匹だけで生活をしているからか、警戒心が強くなっているようでした。健康状態などを確認することはできませんでした。
「もう2匹はそのまま死なすしかないと思っていた」
飼育環境などから早急に保護したほうがよいと判断し、Aさんの介護支援相談員に「この状況では、衛生状態も悪くなるばかりで、彼らの健康にも問題が出てくると思います。まして、餓死させるわけにはいきません。私が新しい家族を探すために動きますので、Aさんに里親募集をする許可をもらってください。費用はかからない方法で考えますので」と提案をしました。
ペットシッターを雇うのを途中でやめたことを考えると、Aさんのかたくなな主張は金銭的な問題が大きいのは明らかでしたので、費用は要らないことをあえて伝えてもらいました。
しばらくしてAさんから許可をもらったと介護支援相談員から返事がきました。そのとき、「解決の方法がわからず、もう2匹はそのまま死なすしかないと思っていた」と言っていたそうです。「そのまま、ほっといてくれ」は、困窮からでた言葉でした。
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