「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方
カウンセリングルームの椅子に腰をおろすなり、Cさんは「ふーっ」と深いため息をつきました。
C:「妻に『お願いだから一緒にクリニックに行って』と言われてきました」
私:「大変な中、よく来られましたね」
今日来てくれたことをねぎらうと、緊張していたCさんの顔がほっとゆるみました。
C:「自分が担当している部門の営業成績が、ここ半年かんばしくありませんでした。そのため結果を出せない同僚が何人も切られる事態となりました。自分も伸びなやみ、対策を練り続けて、毎日残業。深夜に帰宅しても眠れない。その分、日中はぼうっとして考えがまとまらず、上司に怒鳴られ――。
『自分はダメな人間だ、会社のお荷物だ、自分なんかいないほうがいいんだ……』そんな思いを抱えるようになり、次第につらくなっていきました。そして、この苦しみをどうにか終わらせられないかとぐるぐる考えているうちに、気がついたら……逃げだしていました」
自分の存在自体が意味がないと考えた
私:「どれだけつらいか自分ではわからないほど、限界に達してしまったんですね。もしかして消えてしまいたいとか、死んでしまいたい、といった思いが、頭をよぎったりしませんでしたか」
C:「ありました。自分の存在自体、意味がないとまで考えていました。迷惑をかけるくらいなら死んだほうがましだと思っていました。こんなこと、妻には言えないです、心配かけたくないですから」
Cさんは、急にうつむき、身体をふるわせました。それからしばらくのあいだ、あふれるように涙が流れ続けました。
20分くらいたったころでしょうか、ひとしきり泣いたCさんは、深呼吸しながら、次のように言いました。
C:「『死にたくなった』なんて、これまで誰にも言えませんでした。でも、聞いてもらうと、今までより少し気持ちが楽になるものなんですね」
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