「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方
私:「『話すことは、思いを手放す意味もある』って、聞いたことはありませんか。抱えてきたものを手放すと、問題と自分とのあいだに距離がとれるのです。つまり、自分を守る心の境界線を引くことができる。
Cさんは自覚がないと思うのですが、逃げだしたくなるほど、ひとりで仕事の責任を抱えこんでいた。心の境界線が脅かされていたんです。安心、安全な場所に一刻も早く避難しなければならない危険な状況でした。
こんなときは、物理的に距離をとる、つらい状況・人との関係を切る、誰かに助けを求めること。シンプルなことですが、それ自体、あらたに自分を守る強力な境界線となります。
そういう意味で今回の失踪の件は、Cさんにとってはご自身を守るぎりぎりの選択だったように私には思えます、もちろん今後はおすすめしませんが……。おかげで、Cさんは、今しっかりと生き残ることができました。ぎりぎりのところで、ご自身を守ったのです」
Cさんは、また少し涙を流し、照れたように笑いました。
自分の限界がわからなくなって無理をする
ブラックな環境に身をおく人は、心と身体が疲弊して、どこまでが自分の限界かわからなくなり無理をしがちです。安全や健康の境界線がおびやかされ、自分を見失ってしまうのです。今回のように生命にかかわる状況にいたってしまうこともあります。
私:「さて、危険にさらされたとき、何を大事にすればいいのか、ですが、先ほど誰かの支えが必要だと述べましたよね。それには家族など身近な人の温かな協力が必要なんです。ここからは奥さんをお呼びしてもよろしいでしょうか」
Cさんは、深くうなずきました。
私:「危機的状況に陥った人の命綱は、やはり、人とのつながりです。Cさんは身を隠そうとしたときも、ぎりぎりのところで奥さんに連絡をとりました。そして、Cさんがもどってこられたときの奥さんの対応も、すばらしかったです。つらくて弱っているときほど、温かで、自分を受け入れてくれる言葉は本当に助けになります。
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